意味がわからねぇ

政権交代によってこの「自白の研究」というカテゴリーもいずれ不要になるのでは……という期待を以前に表明したことがありますが、まだまだ当分はこのカテゴリーでエントリを書いてゆかねばならないようです。

 暴力団など組織的犯罪では報復の恐れなどから容疑者が真実の供述をためらったり、容疑者に知的障害がある場合は容疑者が取調官に迎合する可能性もあるとして、全過程にこだわらない方法も検討するとした。

これ、小倉秀夫さんもすでに指摘されてるけど、「ほんとにこんな意味不明なことを法相がしゃべったの?」とにわかには信じ難いくらい。「容疑者に知的障害がある場合は容疑者が取調官に迎合する可能性もある」というのは可視化が「一部」ではダメで全面的でなければならない理由にこそなれ、いかなる意味でも「全過程にこだわらない」理由にはなりえない。仮に法相がこの通りに話したのだとして、それを問いただすことなくそのまま記事にしてしまう記者もどうかしてるよ。「報復の恐れなどから容疑者が真実の供述をためらったり」というのも理由にはならない、というのもまさに先日のエントリで示した通り。国家権力というのは(有罪の)立証に使えると思えば被疑者がどれほど隠しておきたいことであっても平気で法廷に出すのだし、そもそも争点に関係ないことであっても恫喝に役立つなら持ち出そうとするものなのである(←の事例では裁判所の訴訟指揮もあってさすがに取り下げたけど、遺族にしてみりゃ大して違いはない)。

 18日発表した中間報告は、検察受理事件の約75%が道交法違反や自動車運転過失致死傷など交通事件で、起訴される事件は約6%にとどまると指摘。「供述の任意性が問題とならないものも含まれ、可視化で実現しようとするメリットに見合わない多大な負担やコストとなる」とした。

だったら検察が「供述の任意性が問題と」なると判断したケースだけ 全過程を記録すりゃいいんだよ。で、録画しなかったけどふたを開けてみたら「任意性が問題と」なった場合には検察の負け、ってことで。だいたい録画で金がかかるのはデータの保存の部分であって、デジタル記録の場合一時的に記録しておくだけなら大したコストはかからない。不起訴の決定した段階でデータ削除すりゃいいんだから(それなら被疑者にとって何の不利益もない)。
よくもまあ、こんだけ理由にもならない理由を並べ立てたものだ。