トンデモ司法取引


一週間ばかり前のニュースですが。

 大阪府柏原市のパチンコ店で2008年9月、現金約1千万円が奪われた強盗事件で、大阪府警が別の窃盗容疑で逮捕し、覚醒剤事件への関与の疑いも浮上した男に「強盗を自白すれば覚醒剤を立件しない」と取引を持ちかけた疑いがあることがわかった。男は強盗を認めて起訴されたが、大阪地裁の遠藤邦彦裁判長は昨年9月の公判で自白の任意性を否定し、自供書などを証拠採用しない異例の措置をとったという。
(後略)

結局はこの強盗事件に関しても共犯者の供述などから有罪になってはいるとのことですが、警察による取引のもちかけを疑って供述調書を証拠採用しなかった、というのは注目すべき判決でしょう。
警察・検察関係者は取調べの可視化に抵抗するために「可視化するなら司法取引などの制度化が必要」と主張しています(そして私も、組織犯罪に関しては司法取引を導入することは少なくとも検討には値すると思っています)が、このような形でのインフォーマルな「取引」がこれまでもおこなわれてきたことは想像に難くありません。司法取引を制度化するなら、被疑者の権利が不当に侵害されないような手だてを同時に確保することは不可欠でしょう。