袴田事件「みそ漬け実験」を東京高裁が視察

袴田事件において、事件発生から1年2ヶ月後に“発見”された5点の衣服。検察は当初の主張を変更しこれらが犯行時に着用されていたとしてきたわけですが、それらに付着していた血痕の「色」をめぐる争いに決着がつく可能性が出てきました。

弁護側は一貫して「1年2ヶ月もみその中に漬かっていたのに血痕の色が鮮やかすぎる」と主張してきました。今月1日、東京高裁が静岡地検で行われていた「みそ漬け実験」を視察。1年2ヶ月前に始められたものです。

newsdig.tbs.co.jp

現時点で東京高裁も静岡地検も声明は出していないようですが、視察に同行した弁護団は「赤みは残らず、黒っぽい色になった」と主張しています。

ところで、この実験について桜井昌司さんが気になることをブログで書いておられるのを読みました。

まあ言っても仕方ないことだが、真空パックにして脱酸素剤を入れた実験をするところか〔ママ〕腐れ組織の証だし、我々冤罪犠牲者の会は、その腐れを社会に広げて真面目な検察官を守るような法改正を行うことに、まだ抵抗するだろうが、人間として恥ずかしくないかなと検察官に伝えて欲しいと言った。

そこで調べてみたところ、今年の3月14日に投稿されたニュースビデオ(静岡のSBSテレビ)が見つかりました。

www.youtube.com

するとたしかに弁護団が「真空パック」での実験に異を唱えていました。血痕の色は捜査当局による捏造が行われたか否かに関わる問題なので、検察は必死なのでしょう。

「供述引き出す力」は「冤罪作り出す力」でもある

月曜日

今月の14日に「産経ニュース」に掲載されたコラム「増える黙秘…供述引き出す力 落ちていないか」が最悪でした。

www.sankei.com

「弁護士がついた瞬間に黙秘に転じる」から「弁護士がつく前にいかに供述を引き出せるかが勝負」だという「警察関係者」のコメントを無批判に引用している点によく現れているように、あれこれ言い訳はしていてもこれは完全に黙秘権の否定です。

科学的な操作手法の進歩により検挙率が近年上がっていることはこのコラムも認めているので、最後の拠り所は「遺族が望む真相の解明」のようです。しかしたとえ冤罪ではないケースでも、「真相の解明」は裁判であるべきです。さらにいうなら、被疑者・被告人が自分の供述が量刑にどう影響するかを考えずにすむ判決確定後にこそ、「真相の解明」の機会はやってくると考えるべきです。弁護士の介入を嫌がっておいて「取調室で容疑者と刑事の真剣勝負」などとは噴飯ものです。

 

などと思っていたら、今日の産経ニュースにはさらに驚愕のコラムが。

www.sankei.com

ここでもまた「稲田さんの兄は判決後、被告の黙秘を「妹をないがしろにした」と吐き捨てた」などと被害者遺族を盾にとっていますが、そんなに事件の真相解明が大事なら、まっさきに反対すべきは死刑制度でしょう。被告人・受刑者の黙秘を永遠のものにしてしまうのですから。

奈良県警の“適正”な取り調べ

実際には紛失していなかった拳銃弾について取り調べられた巡査長が奈良県を訴えている事件、取り調べの音声データを関西テレビが報じました。すでに記事は削除されていますがアーカイヴで書き起こしを読むことができます。

なんとも恐ろしいのが次の箇所です。

【男性巡査長Aさん】
「言いたい、『やりました』って先に言いたい、そこから進めてもらいたいところなんですけど。ホンマに思い出せないんです、何も。いつ取ったか。持ってたんか」
【取調官】
「やりましたでええわ。やりましたでいこう、ほんなら」

浜田寿美男さんが指摘しているように“犯人になろうとする”心理が被疑者に生まれていることがわかります。

月曜日

県は訴えを棄却するよう求めるつもりであるとされ、つまりこの取り調べを違法なものとは認めないわけです。とすれば、今後別の被疑者が同じような取り調べをされる可能性があるということです。

 

『冤罪をほどく』

金曜日

湖東記念病院事件で、西山さんがまだ服役中だったころから取材を開始していた中日新聞取材班の取材過程が昨年暮れに書籍となり、本田靖春ノンフィクション賞を受賞しました。

-中日新聞編集局滋賀・呼吸器事件取材班デスク秦融『冤罪をほどく “供述弱者”とは誰か』、風媒社

サブタイトルにある「供述弱者」というフレーズは、秦氏による Forbes Japan での連載にも用いられていたものです。

forbesjapan.com

受賞をうけた秦氏(この時点ではすでに中日新聞社を退社)へのインタビュー記事がこちらです。

toyokeizai.net

「死刑執行は正しかったのかⅢ」(追記あり)

水曜日

飯塚事件の場合「自白」はありませんが冤罪事件/冤罪疑惑事件を扱う際のタグとして「自白の研究」を用いています。)

9月25日(日)24時55分から放送の「NNNドキュメント'22」は「死刑執行は正しかったのかIII〜飯塚事件・真犯人の影〜」です。

www.ntv.co.jp

飯塚事件については先日NHKでも「正義の行方〜飯塚事件 30年後の迷宮〜」が再放送されたところです。

 

追記

2時間半もの長尺だったNHKの「正義の行方」には及ばないものの通常の倍の55分枠での放送。DNA鑑定の問題点、峠での目撃証言への疑問など重複する論点も当然あるが、番組の後半で“新たな目撃証言”に焦点を当てていたのが特徴の一つ。

www.nishinippon.co.jpアーカイブ

もう一点、死刑執行に関する公文書を開示請求してみせたのがこの番組の見どころ。「〔殆どが黒塗りで開示された公文書、〕このどこかに、死刑執行後に排除されることになる、DNA型鑑定も記されているはずだ」というナレーションが重い。

水産資源関連記事3つ

火曜日

ちょっと前の記事ですが、農水省の統計で昨年の漁獲量が比較可能な統計のある期間において最低を記録したとのことです。もちろん、資源管理のための漁獲制限のおかげではなく、資源状態の悪化のためです。

 農林水産省が27日発表した2021年の漁業・養殖業生産統計によると、養殖を含む漁獲量は前年比1.4%減の417万3千トンだった。比較可能な1956年以降で最低を更新した。魚種別では、サンマやスルメイカ、タコ類が最低となった。

www.47news.jp (アーカイブ

特にサンマ、スルメイカ、タコ類が最低になっているとのことですが、これらは鮮魚売り場を歩いているだけでも資源状態の悪化が見てとれるものです。

サンマと違って脂がのった魚が獲れれば安心というわけでもありません。

jp.reuters.com

水温の上昇が漁獲されるカツオの重量増につながっているとみられ、とするとさらに水温が上昇することで現在の漁場から姿を消すことが危惧される、というわけです。

では水産業界の認識はどうなのか。

www.huffingtonpost.jp

この記事で紹介されている片野氏ですら15年前まで「日本の水産業に対して「乱獲(獲りすぎの状態)」という感覚を持ったことはなかった」というのにはちょっとびっくりします。このブログの前身で井田徹治氏の『サバがトロより高くなる日』(講談社現代新書)をとりあげたのは2005年のことでした。