大崎事件、第4次再審請求へ

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金曜日

-朝日新聞DIGITAL 2019年11月21日 「大崎事件、年度内に第4次再審請求へ 弁護団が会見

記事から判断するかぎり、原口アヤ子さんの健康状態を考慮してとにかく一刻も早く再審請求を行うことを第一に考えた選択のようです。見つかるかどうかわからない有力な新証拠を、腰を据えて探す時間はない。とにかく「新」証拠と言えるものを……と。それでも地裁が最高裁の決定の不当性を汲んで再審開始の決定を出してくれることはあるような気がしますが(なにしろ地裁、高裁までは前回の請求内容で最新開始の決定を下しているのですし)、そこからまた検察が抗告するのかと想像しただけで怒りがこみ上げてきます。

 

ローマ教皇、袴田さんを招待?

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木曜日

-読売新聞 2019年11月16日 「ローマ法王のミサ、袴田元被告を招待…死刑廃止訴える狙い

終末に来日するローマ教皇フランシスコ一世袴田巌さんをミサに招待していることをバチカンの報道官が明らかにした、というニュースです。カトリック教徒になった袴田さんの獄中書簡が新教出版社より刊行されています。

主よ、いつまでですか|新教出版社

趙誠峰弁護士インタビュー

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水曜日

自分自身も冤罪被害者である弁護士を主人公にしたドラマシリーズ『プルーブン・イノセント 冤罪弁護士』のキャンペーン記事で、趙誠峰弁護士がインタビューを受けていました。

-THE RIVER 2019年10月31日 「冤罪はなぜ起こる、弁護士に訊いた無実の闘い ─ 法廷ドラマ「プルーブン・イノセント 冤罪弁護士」特集」

内容は基本通り、「有罪という予断」「調書裁判」「検察による証拠の独占」「不十分な可視化」などに触れたもの。

気になったのは、この記事でも「冤罪か否かが問われるケースとして話題に挙がりやすいのが痴漢事件だろう」として「痴漢冤罪」がモデルとして提示されている点だ。

もちろん「話題に挙がりやすい」ということ自体は、よくも悪くも事実であろう。また後述するような理由で、虚偽自白を伴う冤罪が「痴漢」という犯罪類型において生じていることもたしかだろう。しかし被疑者・被告人の権利という視点からではなく犠牲者非難的な動機で「冤罪」が取り沙汰されるのが「痴漢」でもある。読者の理解を促すために「痴漢冤罪」が繰り返し用いられるという状況は好ましくないのではないだろうか。趙弁護士の最近の受任事件に芸能人を被告人とする強制性交等罪事件があるので、なおさらだ。

この記事を読んでブログで取り上げることを考えている間に、次のようなツイートが目に入った。

 司法関係者がこのように「痴漢」を些末な事件と考えていることが、「痴漢冤罪」を生む大きな要因になっているのではないだろうか。軽い事件だと考えるからこそ地道な捜査の代わりに「さっさと自白とって終わらそう」という意識になりやすく、また「素直に認めれば不起訴になるから」といった“利益誘導”も起こりやすくなる。もしこの推測が正しいなら、「痴漢は重大な犯罪だ」という意識を司法関係者がもつようになることが、冤罪防止の観点からも求められる、ということになるだろう。

 

サクラエビ漁の自主規制、効果は?

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水曜日

-THE SANKEI NEWS 2019年11月16日 【深層リポート】駿河湾だけのサクラエビが大不漁 加工業者4割が廃業検討の衝撃

めずらしく「お財布」や「食卓」の心配だけではない記事です。駿河湾だけで漁が行われているという特殊事情も、自主規制が可能になった要因なのかもしれません。また、「産卵量が増えて、よかったね」で終わりにせず、研究者の次のような指摘を紹介しています。

 では来年の春漁は従来通りできるかといえば、そうは簡単にいかない。東海大海洋学部元教授の鈴木伸洋氏=同大非常勤講師=は「来春が非常に重要。そこで(大量に)とってしまえば元に戻ってしまう」と警笛を鳴らす。サクラエビの産卵は春漁末期の5月下旬から約半年。産卵前のエビを捕獲することになる春漁は「早期に打ち切るべきだ」と指摘する。

あらゆる漁業資源についてこういう姿勢での報道がなされることを期待したいです。

「フレンチに遅れる」……

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水曜日

今年の4月に池袋で起きた乗用車暴走・死傷事件について被疑者が「予約していたフレンチに遅れそうだった」と供述している……という報道が出てきましたね。

この事件、被疑者のプロフィールゆえにさまざまな憶測を呼んできました。ただ今回、世論の反感を掻き立てずにはいないであろうこのような供述がマスコミにリークされたことを考えると、「警察はなにがなんでも被疑者をお咎め無しですませようとしている」ということはないと考えるべきなんでしょう。

まあ、「桜を見る会」のスキャンダルから社会の関心を逸らせるためには「上級国民」でもスケープゴートにするんだ! と主張するひとは現れるのかもしれませんが。

「裁かれる正義」

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水曜日

今週は冤罪に関する番組が二つ、地上波テレビで放送されました。一つは NHK 総合「逆転人生」の11月11日放送回。こちらはまだ途中までしか見ていないのでまた改めて。もう一つはこちらです。

-関西テレビ 2019年11月11日深夜(12日未明) ザ・ドキュメント「裁かれる正義 検証・揺さぶられっ子症候群

この問題については関西テレビは昨年もとりあげています。

-関西テレビ 2018年11月8日 ザ・ドキュメント「ふたつの正義 検証・揺さぶられっ子症候群

ディレクター、プロデューサーも同じ。サブタイトルも同じ。取材対象者も大幅に重なっていますが、メインタイトルが「ふたつの正義」から「裁かれる正義」に変わっています。2018年の番組でもとりあげられていた大阪の事件の控訴審で逆転無罪判決が出た(放送直前に無罪が確定)ことと呼応したかたちになります。

内容的にも、1年前のものに比べれば今回のものは「揺さぶられっ子症候群」の主張に対してはっきりと厳しい内容になっていました。刑事裁判で有罪の根拠として用いられてきた主張ですから、このように批判的な検証の対象となるのは当然のことと言えましょう。

ただ番組の中で、被告人のひととなりに触れて“こんなひとが虐待者のはずがない”とする弁護士の主張がかなり強調されていたという印象を受けたことには、ちょっと引っかかりを覚えました。今回逆転無罪が確定した事件の場合、亡くなった女児の母親(被告人の次女)を含む家族が被告人の無実を一貫して信じたことが救いにはなっており、それが被告人のひととなりによることだったろう……というのはわかります。しかし番組がそのような「ステレオタイプ」にもとづく判断を誘発するような編集を行ってしまっては、かえって丁寧な取材の価値を損なうのではないでしょうか。

「えん罪漂流記」放送からまもなく……(追記あり)

 

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金曜日

さる10月27日に滋賀湖東記念病院事件をとりあげた「えん罪漂流記〜元看護助手が失った16年〜」が放送されました。放送の直前に検察が再審での有罪立証を断念する方針との報道があり、急遽再編集したことが伺える内容でした。

ところが放送からおよそ10日たった昨日、また新たなニュースが。

-京都新聞 患者殺人で無罪示唆の証拠あった「たんで死亡可能性」 元看護助手の再審向け開示

「たん詰まり」による死亡の可能性を指摘した医師の所見が記された捜査報告書が存在しており、それが今回始めて開示されたというニュースです。

もちろんそのような所見が示されたからといって警察としては他の可能性も念頭において捜査を尽くすべきであり、逮捕前に虚偽自白があったことで捜査が誤った方向性に向かってしまったことについては、やむを得ない側面もあったでしょう。番組で虚偽自白の背景としてとりあげられていた発達障害も、発達障害者支援法の制定が2005年であることを考えれば、取り調べにあたって配慮がなかったことが著しく不当であるとは言えないでしょう。しかしこのような捜査報告書が最初から裁判で証拠として開示されていれば、変遷の激しかった自白の信用性の評価にも影響があったことは十分に考えられます。やはり検察が有罪立証に不利な証拠を隠すことを許している刑事訴訟法のあり方(注:追記参照)が問われねばならないでしょう。

また、再審請求の過程で弁護側は「自然死」の可能性を主張してきたわけですが、この捜査報告書は事故死の可能性を示しているわけです。とすると、警察の当初の見込みとは違うかたちではありますが、業務上過失致死が成立する可能性があった、ということになります。これについては、事件の当夜、2時間毎にと指示されていたたん吸引の記録が死亡発覚まで5時間半欠けていたことが、番組でも井戸弁護士によって指摘されていました。もちろん、これはあくまで可能性だけの話で、実際に事故死だったのか、事故死だったとして罰するに値するような過失があったのかどうか……をこれから明らかにすることは非常に困難でしょうが(再審無罪の判決を下すうえで法的に必要なことでもありませんし)。この事件には限らないことですが、冤罪を生む捜査は同時に真相の解明を阻むということですね。

 

追記

8カンテレ(Yahoo! JAPAN ニュース) 11月9日 「【解説】重要証拠を「隠ぺい」か?滋賀県警は西山さんの「12年の服役」に報いる「説明責任」を果たせ

検察の証拠隠しとして書いてしまっていましたが、この記事によれば本件は警察が収集した証拠を検察にすら送っていなかった、というケースとのことです。