3月のホラー

火曜日

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大阪湾では先に今年の休漁を決めていたものの、播磨灘では禁漁を決意できず、漁を解禁したものの案の定一日だけで終了となった……という救いのないニュース。記事を読んでも「くぎ煮の文化」についての危惧はあっても「生物多様性」への言及はゼロ。

救いがないと言えば、近所のスーパーや百貨店では今年も(以前に比べれば遥かに規模が小さくなったとはいえ)くぎ煮につかう醤油やざらめを並べたコーナーが設置されていた。「日本は古来から自然と共存し……」とかまるっきり嘘だよ。

「折山事件」第三次再審請求

月曜日

「虚偽自白」を主張し再審請求中の事件について『東京新聞』がとりあげていました。昨月末の記事です。

www.tokyo-np.co.jp (アーカイブ

弁護団への取材がベースになっている記事であるためその点を割り引いて評価する必要はあるのでしょうが、犯行場所や手段が証拠とされた供述調書と確定判決とで大きく変わっているという事実は冤罪事件にはしばしば見られることです。犯行の実相を知らない被疑者が想像で供述することを強いられたものの、裁判の過程で調書の供述に無理があることが明らかになり……というわけです。

また自白によって発見されたことにされている遺体が実は逮捕の5年前に発見されていた、という指摘も自白の評価という観点からは無視できないポイントでしょう。今後も注意を払っていきたいと思います。

震災対応へのなりふり構わぬ擁護論について

水曜日

早いもので阪神淡路大震災から29年、もう来年には30年目という節目の年を迎えます。今回の北陸大震災のように元旦でこそありませんでしたが、まだ正月気分の名残も残っている時期でした。

当時のことでとても印象に残っていることの一つは、もっとも高い震度を記録した地域に住んでいながら、被害の規模を理解できるまでにはかなり時間がかかったことです。当時在宅していた3人でまずは台所の片付けに取りかかったものの予想される作業量の膨大さに呆然としているうちに、近所に住む祖父母の様子を見に行かねばと思いいたり、玄関を出たところで初めて隣のアパートが倒壊していることに気づきました。幸い自宅の周辺では火災は起きていなかったため、その時点でもまだ被害の広がりと深刻さを理解できていなかったことになります。

 

さて今回の震災にあたっても、第二次安倍政権のころから顕著になってきた自公政権のあり様がはっきりと現れていると思います。そう、市民の生命や生活を気にかける「ふり」すら真面目にしようとしない酷薄さのことです。2011年の民主党政権はもとより、95年の自社さ政権の震災対応についてすらいまだにSNSではデマに基づく非難が吹聴されているわけですが、これと比べるとネトウヨやりふれ派による岸田政権への擁護っぷりは実に対照的です。なにしろ震災対応の遅れを否定するために、自衛隊の無能さを強調することまで辞さないほどです。岸田でこれなんだから安倍政権当時ならもっとすごかったのでしょう。

SNSどころかインターネットの利用すら一般化していなかった95年との比較は困難ですが、2011年にこれほどの民主党政権擁護論を見た記憶はありません。党派的な振る舞いというのは誰でもするものとはいえ、やはり自民党支持層の“なりふり構わなさ”は群を抜いている感があります。これじゃあなにがあっても選挙に負けないのも納得がいきます。下駄の雪が踏まれ続けるのは勝手ですが、巻き添えを食らって見殺しにされるのは御免被りたい。でも巻き添えになるんですよね。

アメリカウナギ、日本に大量に流入か

金曜日

さして重要でもない話題に延々と時間を割くテレビのニュース価値判断に対する批判はSNSでちょくちょく見かけるが、先日「高島屋のケーキ」問題とともにウナギの産地偽装を「どうでもいいニュース」扱いするツイートを見かけてちょっと渋い顔になった。今月はじめのニュースで絶滅が危惧されるアメリカウナギの稚魚が日本に輸入されている可能性を指摘するものがあったからだ。

www.at-s.com

当該ツイートの投稿者が見かけたニュースがこの件だったかどうかも不明だし、いま現在この問題がガザ情勢や自民党の裏金問題を差し置いて報じられるべきものだとも言わないが、それでもウナギ問題は日本における生物多様性への関心の低さを象徴するものではある。正しく扱われるのであれば決して「どうでもいいニュース」ではない。

高島屋のケーキ」だって“老舗百貨店の不始末”で終わりにするのではなく特定の時期に特定の食品の大量消費を煽る商法の問題としてとりあげればウナギを含め多くの問題に結びつくテーマになりうるはずなんですけどね。

袴田事件再審―恥知らずな検察の立証活動

木曜日

そもそも静岡地裁の再審開始決定(2014年)に対して抗告したことも、ようやく始まった再審公判で有罪主張に固執したことも恥知らずなのですから、検察の主張の内容が恥知らずでも驚くことはないのでしょうが、それにしてもこの報道には驚きました。

www.tokyo-np.co.jp

というのも、凶器とされたくり小刀についても捜査当局の“捏造”疑惑がすでに報じられていたからです。

https://apesnotmonkeys.hatenablog.com/entry/2020/08/16/164843

確定判決で凶器と認定されたくり小刀はそもそも当該刃物店で当時取り扱っていなかった、という証言についての『サンデー毎日』の記事について。

https://apesnotmonkeys.hatenablog.com/entry/20180829/p1

「袴田さんがくり小刀を買った」という証言が検察による誘導の産物であった疑いを明らかにした、SBS静岡放送の番組について。

弁護側は刃物店店主夫妻の息子さんを証人として申請すべきでしょう。

取り調べへの弁護士立会いについての連載

朝日新聞』の連載「聖域 取り調べの弁護士立ち会い」(全7回)が昨日完結しました。

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第2回以降のリンクは省略します。この第1回の記事の末尾には、先日違法な取り調べと津地裁で損害賠償を命じられた三重県警の取り調べの録音が付されています。

特に注目に値するのは第1回で紹介されている銃刀法違反容疑事件の取り調べ。モデルガンについて「ずっしりしている感じでしたか」「してるんじゃないですか」というやり取りを調書では「ほかのエアガンに比べてずっしりと重かった」とまとめられていた、という。警察官が立件できるよう、有罪にできるように脚色して調書をまとめていることがよくわかります。

SNSでの反響が私の見た範囲で一番大きかったのが第6回、取り調べる側の言い分を紹介した回です。足利事件などを記者が引き合いに出すと「冤罪(えんざい)を生んだことは組織として反省し警察の取り調べに大きな疑念を抱かせたことは真摯(しんし)に受け止めるべき」と述べてはいますが、結局は「どのような条件を付けたとしても、取り調べの立ち会いを認めることには反対」というのですから、「ほんとうに悪かったと思っているのか?」「疚しいことがあるから反対するんじゃないのか?」と取調室で追及してやりたくなりますね。23日ぶっ続けで。

この回、『朝日新聞』のちょっとした意地の悪さにクスっともしました。

「恫喝や人格を否定する発言は刑事失格」と久保さんは言います。記事の後段では、実際に違法とされた取り調べの音声動画を紹介しています。

 

いや、穫るなよ(Part II)

月曜日

2023年11月14日放送の「クローズアップ現代+」(NHK総合)、テーマは「マグロが捨てられる!?海の恵みをどう守るか」でした。

www.nhk.or.jp

番組サイト「クローズアップ現代全記録」では番組内容を書き起こした記事を読むことができます。まあ基本的にはタイトルを見て予想された通りの内容でした。識者による解説はかなり水産庁に甘く、他国のせいにする傾向が強いようにも感じましたが、いちおう「ヤバい現状」の一端くらいは伝わるつくりだったかな、と。番組中で紹介される資源量データによれば近年でもまだ20世紀後半(それ以前については紹介されない)の最盛期に比べれば半分程度なのですが、にもかかわらず簡単に「2010年以降、回復傾向にあります」と言ってしまうあたりは相変わらずですね。まだたかだか10年ほどのトレンドなので(これに近い“回復”なら1990年代前半にも見ることができます)もっと慎重に判断すべきではないでしょうか。