愛媛県警の自白強要を被害者が告発
-産経ニュース 2019年8月13日 「愛媛・女子大生誤認逮捕 手記公開で分かったずさん捜査の中身」
公開された手記によれば取り調べの様子は次のようなものだったようです。
(前略)
取調官は、私が「本当の犯人を捕まえてください。こんなの何の解決にもならない」と言えば、「犯人なら目の前にいるけど」と言い、はじめから私を犯人だと決めつけていました。他にも「やってないことを証明できないよね?」「タクシーに乗った記憶ないの? 二重人格?」「罪と向き合え」など、耳を疑うようなことを次から次へといわれました。
また、自白を強要するかのような言葉を執拗(しつよう)にいわれました。
「就職も決まってるなら大事(おおごと)にしたくないよね?」
「ごめんなさいをすれば済む話」
「懲役刑とか罰金刑とか人それぞれだけど早く認めたほうがいいよ」
「認めないからどんどん悪い方へ行ってるよ」
「今の状況は自分が認めないからこうなってるんだ」
(後略)
裏付け操作が不十分だった点は「ずさん」ですむとしても「就職」を盾にとって自白を強要した点は「ずさん」では済まされません。ここで引用した取調官の発言だけからも(1)被疑者が犯人であることを前提にした取り調べ、(2)被疑者の尊厳を毀損することで“心を折っ”て自白を取ろうとする手法、(3)取り調べを「反省」の場と考える発想などが浮かびあがってきます。
実は愛媛県警は2006年に捜査情報などの流出事件を起こしており、流出したデータの中には「被疑者取り調べ要領」が含まれていました。しんぶん赤旗の2013年2月4日の記事「全過程可視化 えん罪防ぐ」という記事はその内容を次のように紹介しています。
●粘りと執念を持って「絶対に落とす」という気迫が必要
●調べ室に入ったら自供させるまで出るな
・被疑者のいうことが正しいのではないかという疑問を持ったり、調べが行き詰まると逃げたくなるが、その時に調べ室から出たら負けである
●被疑者はできる限り調べ室に出せ
・自供しないからと言って、留置場から出さなかったらよけい話さない
・否認被疑者は朝から晩まで調べ室に出して調べよ。(被疑者を弱らせる意味もある)
現在この要領が公式に用いられているかどうかは承知していませんが、事実上この方針に沿った取り調べがいまも行われていることは明らかです。
もちろん警察は「弱腰の取り調べでは真犯人も自白させることができない」と(いま、このタイミングで公言するかどうかは別として)考えているのでしょう。それに一理もないとはいいません。しかしただでさえ人間には確証バイアスがあるのに、「被疑者のいうことが正しいのではないかという疑問」を持つことを「負け」と考えるような組織文化はわざわざ確証バイアスを強化しているようなものです。
再発防止には「この被疑者は犯人ではない」という前提で事件をとらえることを任務とする担当者、組織を置くことが必要でしょう。