やはり張り込みにはアンパンだった!

昨月、鹿児島地裁である事件への無罪判決が下りました。

 車内から発泡酒を盗んだとして窃盗罪に問われた鹿児島県伊佐市の男性(51)に、鹿児島地裁加治木支部は24日、無罪(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。車は、車上荒らしを捜査中の警察官が止めたもので、小畑和彦裁判官は「被告に車上狙いを実行させる目的と推認され、国家が犯罪を誘発した」と指摘した。

 判決によると、男性は昨年9月6日早朝、伊佐市のスーパー敷地内に伊佐署の男性警部補が止めた軽トラックの助手席から、発泡酒1ケースを持ち出したところを、張り込み中の捜査員に現行犯逮捕された。車は無施錠だった。

 男性は発泡酒を盗んだことを認めたが、弁護側は「犯行を働きかけた違法なおとり捜査だ」と無罪を主張。検察側は、車は警部補が捜査のため知人に借りたもので「発泡酒は知人へのお礼に用意した」などと反論していた。
(中略)
 犯罪の実行を働きかけた「違法なおとり捜査」との弁護側の主張については、警察官による働きかけがなかったので、おとり捜査ではなく、被害に遭いやすい状況を作った「なりすまし捜査」との判断を示した。
(http://digital.asahi.com/articles/ASK3S3QQ6K3STIPE00N.html)

この記事では「発泡酒1ケース」だけが記されていますが、車内には発泡酒とともに食パン2袋とロールパン1袋(5個入り)も置かれていました。このパンが無罪判決の決め手となります(ちょっと嘘)。

 また,本件軽トラックに積載していた本件パンは食パンやロールパンであって,捜査員らがトースターもなくマーガリンやジャム等もない状況下で張込みや尾行等の捜査活動に従事しながら食べるのに全く適さない種類のものであるから,これを捜査員らの夜食用であるとするC警察官の供述は明らかに不自然・不合理である。なお,C警察官は,この指摘を受けて,警察署に戻ればトースターもあるなどと供述を加えるが,後付けの弁解というほかない。
(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/677/086677_hanrei.pdf)

アンパンや焼きそばパンだったら有罪判決だったかも……というのは冗談ですが、「本件捜査の性質に照らすと、今後も本件と同様の違法捜査が繰り返し行われることは大いにあり得るところであるから、本件捜査により獲得された証拠を許容することは,将来における違法捜査の抑制の見地からして相当でないというべきである」という明快な判断を下した裁判官に敬意を表したいと思います。