『虚偽自白はこうしてつくられる』

一昨年の12月に刊行されていたのだがうっかり一年間も気づかずにいて、昨年末から読み始めた。
著者はすでに狭山事件での弁護側鑑定書をベースとした著書として『狭山事件 虚偽自白』(新版、北大路書房)を刊行しているが、こちらは再審請求の過程で検察が開示した(半世紀近く、その存在すら隠されてきた)取調べの録音テープを素材として、虚偽自白がつくられてゆくプロセスを明らかにしたもの。
刑事裁判では、証拠としての被疑者・被告人の供述は「被告人が真犯人である」という仮説が十分に立証されているかという観点からのみ検討される、と著者は指摘する。理屈のうえでは「推定無罪」なのだからそれで当然ではないか、と思われるかもしれない。しかし結果として、「被告人が無罪だとしたら」という仮説を想定したうえで供述を検討するという視点が希薄になってしまう、というのである(19ページ)。
したがって本書では「被告人が真犯人である」という仮説と「被告人は無実である」という仮説を対等なものとして扱い、被疑者の供述プロセスはどちらの仮説のもとでよりよく説明されるか、が検討される。
本書は具体的な冤罪疑惑事件を対象とした分析ではあるけれども、時折問題として取り上げている「動機の供述」についていえば、真犯人の供述(を警察がリークしたもの)を真に受けることの危険性を理解する助けにもなると思われる。


近いうちに『狭山事件 虚偽自白』とあわせて読みなおしてみたい。