『恵庭OL殺人事件』


(自白のない事件ですが、便宜上「自白の研究」タグを用いています)

  • 伊東秀子ほか、『恵庭OL殺人事件 こうして「犯人」は作られた』、日本評論社、2012年

2000年5月に北海道で発生したいわゆる恵庭OL殺人事件の冤罪疑惑については、不勉強であったため、一昨年の再審請求棄却に際して簡単なエントリを書いただけでした。昨年の秋に『ニッポンの裁判』(瀬木比呂志、講談社現代新書)を読んでいるとこの事件が紹介されており、かなり冤罪疑惑が濃いように思えたので、瀬木氏が援用していた文献を読んでみることにしました。主著者は事件の弁護人の1人、被疑者段階から関わってきた弁護団の中心といってよい人物。
あくまで弁護側の視点から書かれている本だということを念頭においたとしても*1警察および検察の捜査活動、および公判活動に相当な問題がある――それこそ、無罪でなかったとしても批判を免れることはできないレベルで――ことは確かであるように思えます。おそらくさらなる再審請求が行われるでしょうから、今後も注意を払っていきたい事件です。

*1:被被告人・現受刑者に寄り添い過ぎではないかと思える点もたしかにあり、瀬木氏が「無言電話の動機」に関する伊東氏の解釈についてそう指摘している(『ニッポンの裁判』86ページ)ほか、私自身もいわゆる「情況証拠」に関する2010年の最高裁判決についての解説中にミスリーディングな箇所がある(『恵庭OL殺人事件』95ページ)ように感じました。そのような問題点を認識したうえでの判断です。