「メモの廃棄」は被告人に有利に(追記あり)
- 毎日新聞、2015年12月30日、強姦罪で1審実刑の被告保釈 DNAで別人
捜査段階では「微量だったため、型の鑑定はできなかった」とされていた試料から、控訴審段階での再鑑定で被告人とは別人のDNA型が検出され、無罪判決を待たずして被告人が保釈された、というケースです。
県警の鑑定を担当した職員が、過程を記したメモを廃棄した点も焦点の一つだ。鑑定人は証人尋問で「ノートに一部始終を記録(メモ)するのが普通で明らかに異様」と強く批判。検察側は「(鑑定人のような)研究者と(警察職員では)立場が異なる」と主張し、メモの廃棄は問題ないとの立場だ。
わけの分からない釈明、としか言いようがありません。被疑者・被告人となった1人の人間の人権に多大な影響を及ぼしうる鑑定を行う「警察職員」に課される義務が研究者のそれより軽くてよいはずがありません。不都合な事実を隠蔽するためにメモを廃棄したとの疑念は否定しがたいものです。
(虚偽自白が焦点となった事件ではありませんが、冤罪事件、冤罪疑惑事件についてのエントリを分類するタグとして「自白の研究」を用いています。)
追記(2016年1月14日);年が明けた1月12日、福岡高裁で逆転無罪判決が下りました。報道によると、検察の立証活動にも問題があったようです。
(……)また2審では、検察が被告の関与を立証するため、裁判所に通告しないまま被害者に付着した体液を使ってDNA鑑定を行いましたが、裁判所は12日の判決で、「必要性がなく貴重な資料を失わせたのは著しく不適切だ。秘密裏に鑑定したのは信義則に反し、裁判の公正を疑わせかねない」と指摘して、検察の対応を厳しく批判しました。
(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160112/k10010368951000.html)
もはや、証拠の管理を検察に任せていることを再考すべきなのかもしれませんね。