大崎事件は再審に至らず

 広島市東区の高齢者施設で2012年12月、入居者の女性(当時85)が布団に火をつけられ焼死した事件で、広島地裁裁判員裁判は16日の判決で、施設の元介護福祉士、入沢亜加音(あかね)被告(22)=広島県安芸太田町松原=に対して建造物等以外放火と殺人の罪について無罪(求刑懲役20年)を言い渡した。伊藤寿裁判長は、検察側が立証の柱とした被告の自白について「信用性に疑いが残る」と述べた。

裁判員制度が導入されてから、裁判所が捜査段階の自白調書の扱いについてより慎重になったのではないか、ということは素人ながら感じます。しかしながら、そのような方針は再審に関しては必ずしも適用されていないようです。

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 再審請求審では共犯とされた親族3人(いずれも故人)の自白の信用性が焦点となった。原田裁判長は「新証拠を踏まえても、大筋において信用できる」などと判断。「確定判決の事実認定に合理的な疑いは生じない」と結論づけた。
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 昨年5月に始まった即時抗告審では、検察側から指紋の鑑定書や捜査写真のネガなど計213点の未開示証拠が開示された。確定判決とは異なる殺害方法が記された共犯者の取り調べ時のノートなどから、弁護団は「共犯者は知的障害があり、自白は捜査員の誘導によるもので信用できない」と訴えていた。


 また、即時抗告審で高裁は弁護団の求めに応じ、鑑定書を作成した専門家の証人尋問を実施。法医学者は遺体の所見が確定判決の殺害方法と矛盾すると指摘。自白を分析した心理学者は「体験に基づかない供述の可能性が高い」と述べ、信用性が乏しいと証言した。
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少なくとも、現在の心理学的な知見に照らして自白の信用性を再審で吟味するに値する事件、だと思うんですけどね。