沈黙つながり


ここのところろくに映画も観ることができてなかったんですが。

前者の原題は »Im Labyrinth des Schweigens« (沈黙の迷宮の中で)なので、沈黙つながりの2本を見てきました。
『顔のないヒトラーたち』の題材となっている裁判については、少し前に別館で紹介した中公新書『ニュルンベルク裁判』でも少し触れられています。印象的だったのは、娯楽映画のフォーマットにきっちり収まっていたこと。冒頭のシーンなど、かつてよくあった「ナチ残党もの」を連想させます。考えてみれば「前例のない困難なミッションへの挑戦」というのは娯楽映画にうってつけの題材ですしね。ドイツではすでに、素直に賞賛できる取り組みとして扱われているのか、と思うと羨ましいやら情けないやらです。
しかし邦題はちょっと感心しないですね。なんというか、ホロコーストについてのクリーシェをそのままタイトルにしたかのような安直さを感じて。「沈黙」というのは映画にとって(そしていまの日本の状況を考えるうえでも)重要なテーマなのに。
結構な客の入りだった『顔のない……』と違ってガラガラだったのが『ルック・オブ・サイレンス』。前作よりはオーソドックスなドキュメンタリーなのが災いしたのか? 『アクト・オブ・キリング』と違うところは加害者たちが被害者遺族に対面する点です。だから「自慢話」よりも「弁明」が中心になります。
考えてみると、この映画が題材としている大虐殺とアジア・太平洋戦争との時間差は2、30年なのだから、いまから2、30年前であればこういう映画をつくることも可能だったんですねぇ。