『アクト・オブ・キリング』、『チスル』(追記あり)


「反共」を動機とする虐殺を題材とした映画を2本。

極力予備知識を仕入れずに観に行ったので、これほど「映画についての映画」という側面が強いとは予想してなかった。なにしろ主人公(?)がもともと映画のダフ屋をシノギにしていたヤクザ。『野生のエルザ』のテーマ曲が“効果的”に使われていた。
ほとんどの方がご存知の通り、「過去の虐殺を再現する」というコンセプトで撮影が進んでいくわけだが、適当にかき集められたエキストラ(特に女性)にとっては「再現」どころか現在進行形の暴力だよな、これ。外国人スタッフの目はあるとはいえ、仕切ってるのは現役のヤクザなんだし。
なお、監督の名前(オッペンハイマー)からは原爆というもう一つの虐殺を連想するわけだが、調べた限りでは縁戚関係は内容だ。ただし、Internet Movie Database によれば、監督の親族からもホロコースト(これまた、反共を動機とする暴力としての側面を持つ)の犠牲者が出ているとのこと。
159分の長尺版があるようだが、ソフト化されないかな。調べた限りでは、イタリア版DVDがこの長尺版のようだが……。

  • 『チスル』 지슬 − 끝나지않은 세월 2 (監督:オ・ミョル、出演:ヤン・ジョンウォンほか、2012年、韓国)

原題には「終わらない歳月2」という意味のサブタイトルがついているが、その事情についてはこちらで公開されているプロデューサー、監督のインタビューを参照。
一度観ただけでは「?」なところが多数出る人が少なくないんじゃないだろうか。夜のシーン、洞窟のシーンなど暗い場面が多く、かつそこを引きで撮ってたりもするので、画面に何が写っているかを判別するためだけにでも非常に集中力を要求される。でも考えてみれば、事件に巻き込まれた島民にとっても事態はよく理解できないものだったはずだ。だから「脚本が破綻している」とか「編集がヘタ」ということではなく、簡単には理解できないようにつくられているということ。


7月10日追記
7月6日に NHK Eテレで放送(午前5時〜6時)された「こころの時代〜宗教・人生〜」は、「海鳴りの果てに〜言葉・祈り・死者たち〜」というサブタイトルで詩人・金時鐘さんをとりあげていました。

(……)
「新潟」「猪飼野詩集」「光州詩片」などの傑作詩を生み出してきた金時鐘さん。終戦で、日本語と母国の朝鮮語の間で揺れ動く。1948年、故郷で遭遇した「チェジュ(済州)島4・3事件」。島を逃れ、大阪生野区、旧猪飼野に渡る。そこでは、朝鮮特需の中、チェジュ島出身者が兵器の下請けで生きのびた。“自分の中に巣くう日本語に報復する”思いで、詩を書き続けてきた金時鐘さんが、現代人に心のありようを問う人生を語る。
http://www4.nhk.or.jp/kokoro/x/2014-07-06/31/7528/

自身の活動家歴ゆえに「ほら、やっぱり共産主義者の暴動だったんじゃないか」と誹謗されるのを恐れ、永らく四・三事件の体験については語ってこなかった、とのことです。