『冤罪の軌跡』ほか
新潮新書なんて滅多に買わないのだけれども、古書店に出ていたので題材が題材ということもあり買ってみた。真犯人の犯行動機に関する記述などに“オヤジ臭さ”が漂うものの、事件発生からえん罪が晴れるまでの経緯が要領よくまとめられている。この事件については、悪名高い精神鑑定について書かれたものは読んだことがあったのだが、それ以外の経緯については通りいっぺんのことしか知らなかったので、勉強になった。冤罪被害者と家族との間で交わされた手紙なども資料として用いられているのだが、家族が無実を確信し得る事情があり、最初から最後まで家族観の信頼が壊れなかったのが不幸中の幸いだったと言えるだろうか。もちろん、生活の困窮などによる家族の苦しみをあがなうに十分な「幸い」ではないだろうが。
2014年1月号の『世界』(岩波書店)には、冤罪関係の記事が3本掲載されている。
- 指宿信、「誤判に学ぶ国の司法、学ばない国の司法 ノースカロライナ州の刑事司法改革を通して考える」
- 菅野良司、「狭山事件 51年目の新証拠」
- 庄司洋加、「司法は自らの過ちを正すことができるか―名張毒ぶどう酒事件と袴田事件から考える公正な裁判」(「アムネスティ通信」拡大版)
菅野氏の記事は、狭山事件に関心をもつ者にとっては必読。改めて警察への怒りが湧いてくる。