恭順戦略の強要


昨日、読売の社説とどっちを取り上げようか迷ったニュース。

 ファイル共有ソフトWinnyウィニー)」を開発し、著作権法違反に問われ、8日の大阪高裁判決で逆転無罪となった元東京大大学院助手に対し、NHKの記者が「無罪主張は悪あがき」などとした上でインタビューを要請する手紙を出していたことが明らかになった。
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 弁護団事務局長の壇俊光弁護士によると、手紙は1審公判中の2005年、当時、NHK京都放送局に勤務していた20代の記者から送られた。内容は、「弁護側が的外れな見解を繰り返している」と弁護方針を批判した上、「インタビューに応じて動機を正直に話せば、世間の納得は得られる」と求めていた。壇弁護士は6日付の自身のブログでこの経緯を明らかにし、「露骨な弁護妨害」と批判した。
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一読して思ったのは「インタビューを申し込む手紙でこんなこと書くなんて、すげぇな」。そういうときはべんちゃらの一つも言うものかと思っていたんだけど、NHKともなれば取材予定者に悪感情をもっていることを明らかにし「このままだとひどい報じ方されるぞ」という予期をもたせることによって取材に応じるインセンティヴを生じさせる、なんてこともするんだろうか、と。被疑者や被告人がそういう予期をもつとすれば(ふつうもつでしょう)たしかに「弁護妨害」だよな。しかも逆転無罪で赤っ恥*1
他方で、何度か問題にしてきたように、有罪が確定するに至らない被疑者や被告人についてマスメディアが「反省の様子を見せている」かどうかに強い関心を示すことは度々あることで、これだって被告人にとっては恭順戦略以外の選択肢をとるのを強く躊躇わせる要因になりうるだろう。言ってみれば、今回の事態は、恒常的に行なわれていることの舞台裏が暴露されちゃったということではないのか。


参考:小倉秀夫さんのエントリ。
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2009/10/post-eebd.html

*1:仮に最高裁でまたひっくり返ったとしても、高裁で無罪判決をとれた以上「的外れ」とまで評するのに無理があることは揺るがない。