誘導の見本


そりゃ検察が録音テープの公開に抵抗するはずだ。

 90年に女児(当時4)が殺害された「足利事件」で再審開始が決まった菅家利和さん(63)が、不起訴となった別の女児殺害事件について栃木県警の取り調べを受けた際の録音テープに、捜査員の問いかけに応じて「自白」内容を変えている場面があることが関係者の話で分かった。
(中略)
 「(犯行を)いつやったの」という捜査員の問いかけに菅家さんが2度「仕事が終わってから」と答えた後、捜査員が「昼なら明るかんべ。夜だと暗くなるだろ」と指摘すると、菅家さんは「じゃあ夜です」と供述を変えた。


 また、遺体を殺害現場とされた神社から約2キロ離れた河川敷に運んだ手段を捜査員が尋ねると、菅家さんは「自転車にひもで縛った」と供述。捜査員が「それ、落ちるだろう」と問い返したところ、菅家さんは「ビニールの袋(に入れた)」と応じ、捜査員は「透き通っていないものだな」と念を押した。
(後略)

絵に描いたような「虚偽自白の誘導」ですね。自分が「やった」こと自体は認めた被疑者がなお犯行の細部について嘘を言うこと(そして追及されて供述を覆すこと)自体はあり得ることです。しかし嘘をつくからには理由がなければならない。嘘をつくことでなお自分を護る余地があると考えればこそ、嘘をつくわけです。しかし犯行の時間帯や運搬手段に関して嘘をついたところで被疑者にとってはなんの得もありません。あえてデタラメな供述をすることで調書に偽の「無知の暴露」の痕跡を残そうと考えるほどに狡猾な人間ならばこういう嘘をつくかもしれませんが、しかしそれほどまでに狡猾なら検察が都合の悪い調書を開示しないこと、公判で否認しても自白調書を取られていればなかなか無罪を勝ち取れないこと・・・なども知っていておかしくありませんし。


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