亀井静香が元警察官僚にあるまじき与太をとばしている。
- 毎日jp 2009年10月6日 「亀井金融・郵政担当相:家族間殺人増加「経団連が悪い」 「日本型経営捨てた」」
亀井静香金融・郵政担当相は5日、東京都内で行われた講演会で、「日本で家族間の殺人事件が増えているのは、(大企業が)日本型経営を捨てて、人間を人間として扱わなくなったからだ」と述べ、日本経団連の御手洗冨士夫会長に「そのことに責任を感じなさい」と言ったというエピソードを紹介した。御手洗会長は「私どもの責任ですか」と答えたという。
(後略)
- NIKKEI NET 2009年10月6日 「家族殺人「大企業に責任」 亀井氏」
亀井静香郵政・金融担当相は5日、都内で講演し「殺人事件の半分以上が親子兄弟夫婦の殺し。こんな国は日本だけだ。人間を人間扱いしないで利益を上げるための道具としてしか扱わなくなったからで、大企業が責任を感じなきゃ駄目だ」と述べた。(後略)
近年の日本では殺人事件に占める家族間殺人(殺人未遂を含む)の比率が高いのは事実であって、私自身も何度か言及している。
http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C497052863/E20080320124705/index.html
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20090107/p1
これらのエントリで取り上げた事例をふまえれば、亀井発言はけっして孤立した現象ではないことがわかるだろう。
いうまでもなく「家族間殺人の比率が高い」ことは直ちに「家族間の殺人が多い」ことを意味しない。「他人間での殺人が少ない」のかもしれないからだ。そして現代日本についてどちらの解釈が妥当であるかは、現代よりも殺人の発生率が高かった時期において家族間殺人の比率は現在よりも低かったことから自ずと明らかになる。
また、殺人事件の半分が家族間のものであるというのは必ずしも現代日本に固有の現象でもないようだ。長谷川眞理子・長谷川寿一が邦訳した『人が人を殺すとき』(マーティン・デイリー&マーゴ・ウィルソン、新思索社)で援用されているデータによれば、デンマークにおける1933年から1961年までの殺人事件で犯人が判明した678件のうち50.6%が近い血縁者によるものだという。やはり殺人が少ない社会では家族間殺人の比率が高くなるのである。
このデンマークのデータにも親による嬰児殺しが多数含まれているとのことだが、家族間殺人の多くは実は嬰児殺しや介護疲れによる殺人、あるいは障害を持つ子どもの“将来を悲観”しての殺人であり、かつて与党議員だった亀井静香は経団連を責める前に自民党の社会福祉政策について反省してみる必要があろう。