「凶悪犯罪が後をたたない」? ニッポソのはなしですか?

〜バス放火事件・被害者"最後の旅路"〜(仮)]」
番組そのものは非常に楽しみではあるのですが、公式サイトの番組紹介の末尾にある「無差別殺人事件などの凶悪犯罪が後をたたない中、なぜ現代社会は「加害」の芽を摘み取ることができないのか」という一節に脱力してしまいました。2013年の殺人事件(未遂、予備含む)の認知件数が戦後初めて1,000件を切った、というニュースを先月見たと思っていたのですが、これは模造記憶だったのでしょうか? 歴史的比較でも国際比較においても殺人事件の発生率が極めて低いこの社会で、いったいいつまで「凶悪犯罪が後をたたない」などというクリーシェが使われ続けるのでしょうか? 「無差別殺人事件」なんて、マスメディアが華々しくとりあげているだけで、件数としては(この社会の人口規模を考えれば)極めて稀でしかありません。いくつかの限られた類型のものについてはともかく、殺人事件一般について今の日本で「なぜ現代社会は「加害」の芽を摘み取ることができないのか」などと問うことに意味があるのでしょうか? 私はむしろ、特に若者による殺人事件の少なさこそがこの社会の病理を逆説的に表している、という可能性の方を真面目に追及すべきではないかと思っています。
さらにいえば、殺人事件が少ない社会だからこそ被害者(未遂の場合)や遺族にとっていっそう遣り切れない思いが募る、ということはないのでしょうか? “誰がいつどこで犯罪になってもおかしくない社会”ではないからこそ、「なぜ私(の家族)が?」という問いはより切実なものになりうるはずです。無意味な厳罰化を煽るような内容になっていないかどうか、実に心配です。