ブクマコメントより

ちょっと興味深かったので。
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20090907/p1

makamaka_at_donzoko 司法 先日検事やってる人と飲む機会があったので全面可視化について聞いたら、被疑者に不利な発言も記録されるので、被疑者のためにならないと言われた。温情主義?

先のエントリで紹介した庭山弁護士の発言などに照らして考えると、口実ではなく本気でそう思ってる可能性は高いと思いますが、可視化と言ったって録画した動画をネットで公開するとか公判で全部再生する、なんてことではないわけです。具体的にどのような制度として導入されるかにももちろんよりますが、基本的には自白の任意性を巡って争いがある場合に、検察側が「自発的に自白した証拠として使える部分」を、弁護側が「自白の強要、誘導、偽計の証拠として使える部分」をそれぞれ探してきて証拠申請する、ということになると考えるのが常識的でしょう。そもそも自白調書には被疑者に「不利」なことが書いてあるわけで。検察が「こいつには重い刑しょわしてやろう」と考えているときには「不利な発言」はバッチリ調書に記載されるし、それどころか光市母子殺害事件の裁判のように被告人(被疑者)が出した手紙から「不利な発言」探してきて証拠申請するわけです。他方、全体としては酌むべき事情があるので軽い求刑で済ましたいが、部分的には「被疑者に不利」な発言がなされている、といったケースを考えることは確かにできます。しかしそれならば検察がその部分を証拠申請しなければいいわけで。弁護側がわざわざ被告人に不利な部分を掘り出してくることは通常は*1ありませんから。もちろん、可能性としては事前に想像しないような仕方で記録が被疑者・被告人に不利にはたらくケースがないとは言えませんが、可視化を拒絶する重要な根拠になりうるとは思えないですね。

*1:被告人のためになると思って証拠申請した部分がよくよく考えたら被告人に不利だった、という戦術ミスのようなケースは想定できるかもしれませんが。