DNA鑑定と冤罪疑惑

今朝(24日)のテレビ朝日サンデープロジェクト」ではDNA鑑定の結果が決め手となって有罪判決が下った2つの強姦事件について、冤罪の可能性があるとする特集を組んでいた。

DNA鑑定“光と影”
〜「冤罪疑惑」と「失われた証拠」〜


今月、足利事件のDNA再鑑定結果に司法・警察関係者、そしてメディアは揺れた。19年前、DNA型が一致するとして逮捕された受刑者。しかし再鑑定結果は「受刑者と犯人のDNA型は一致しない」という衝撃的なものだった。

近年、精度が飛躍的に向上し、確率的に個人を識別できるまでになったDNA鑑定。その最新の科学技術が“冤罪疑惑事件”を解明しようとしている。

ところが一方で、最新のDNA鑑定で犯人とされた容疑者が無実を訴える事件がある。今回、番組は、これまでメディアに全く報じられていない二つの強姦事件を取材した。
取材した二つの事件には多くの共通点があった。一つは、警察が容疑者を逮捕した理由は「DNA型が犯人と一致する」という点。
もう一つが、被害者が証言している犯人像と容疑者は大きく食い違う点だ。さらに、いずれの事件でも、警察は一級品の証拠を、なぜか犯人検挙前に被害者に返していたのだ。

そして、下された判決は実に驚くべきものだった・・・。

21日から始まった裁判員制度裁判員が有罪か無罪かを判断する証拠は果たして適正なものなのか。犯罪捜査の「伝家の宝刀」、「水戸黄門の印籠」にも、なぞらえられるDNA鑑定。
その知られざる”落とし穴”を独走追跡する。

「なぜか犯人検挙前に被害者に返し」たという証拠は一方の事件では被害者のはいていたスカートで、これはまあ「犯人検挙前に」という点を除けば理解できる。しかしもう一方の事件では、なんと犯人の精液を採取するのに使用しDNA鑑定用に一部を切り取った残りの綿棒を「被害者に返し」た、と警察は主張。公判で被害者は綿棒を受けとったことを否定し、そもそもそんな綿棒など「要らない」と供述したという。被害者がこんな点で嘘をつく合理的な理由はみあたらないので、警察が嘘をついている可能性は高い。もちろん、嘘をついているのは綿棒が残っていない理由についてだけで、鑑定そのものは適正に行なわれた、という可能性を直ちに排除することはできない。しかし警察の手落ちで公判段階での再鑑定が不可能となり、しかも嘘までついている可能性が高いケースで有罪判決が出るのであれば、ありもしない資料をDNA鑑定にかけたと称して事実無根の鑑定書をでっちあげることだってできてしまうことになる。裁判官の心証を強く左右する証拠であるだけに、「DNA鑑定プロセスの全面的な可視化を」という被告代理人の主張は至極尤もだろう。