「供述引き出す力」は「冤罪作り出す力」でもある

月曜日

今月の14日に「産経ニュース」に掲載されたコラム「増える黙秘…供述引き出す力 落ちていないか」が最悪でした。

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「弁護士がついた瞬間に黙秘に転じる」から「弁護士がつく前にいかに供述を引き出せるかが勝負」だという「警察関係者」のコメントを無批判に引用している点によく現れているように、あれこれ言い訳はしていてもこれは完全に黙秘権の否定です。

科学的な操作手法の進歩により検挙率が近年上がっていることはこのコラムも認めているので、最後の拠り所は「遺族が望む真相の解明」のようです。しかしたとえ冤罪ではないケースでも、「真相の解明」は裁判であるべきです。さらにいうなら、被疑者・被告人が自分の供述が量刑にどう影響するかを考えずにすむ判決確定後にこそ、「真相の解明」の機会はやってくると考えるべきです。弁護士の介入を嫌がっておいて「取調室で容疑者と刑事の真剣勝負」などとは噴飯ものです。

 

などと思っていたら、今日の産経ニュースにはさらに驚愕のコラムが。

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ここでもまた「稲田さんの兄は判決後、被告の黙秘を「妹をないがしろにした」と吐き捨てた」などと被害者遺族を盾にとっていますが、そんなに事件の真相解明が大事なら、まっさきに反対すべきは死刑制度でしょう。被告人・受刑者の黙秘を永遠のものにしてしまうのですから。