「裁かれる正義」
今週は冤罪に関する番組が二つ、地上波テレビで放送されました。一つは NHK 総合「逆転人生」の11月11日放送回。こちらはまだ途中までしか見ていないのでまた改めて。もう一つはこちらです。
-関西テレビ 2019年11月11日深夜(12日未明) ザ・ドキュメント「裁かれる正義 検証・揺さぶられっ子症候群」
この問題については関西テレビは昨年もとりあげています。
-関西テレビ 2018年11月8日 ザ・ドキュメント「ふたつの正義 検証・揺さぶられっ子症候群」
ディレクター、プロデューサーも同じ。サブタイトルも同じ。取材対象者も大幅に重なっていますが、メインタイトルが「ふたつの正義」から「裁かれる正義」に変わっています。2018年の番組でもとりあげられていた大阪の事件の控訴審で逆転無罪判決が出た(放送直前に無罪が確定)ことと呼応したかたちになります。
内容的にも、1年前のものに比べれば今回のものは「揺さぶられっ子症候群」の主張に対してはっきりと厳しい内容になっていました。刑事裁判で有罪の根拠として用いられてきた主張ですから、このように批判的な検証の対象となるのは当然のことと言えましょう。
ただ番組の中で、被告人のひととなりに触れて“こんなひとが虐待者のはずがない”とする弁護士の主張がかなり強調されていたという印象を受けたことには、ちょっと引っかかりを覚えました。今回逆転無罪が確定した事件の場合、亡くなった女児の母親(被告人の次女)を含む家族が被告人の無実を一貫して信じたことが救いにはなっており、それが被告人のひととなりによることだったろう……というのはわかります。しかし番組がそのような「ステレオタイプ」にもとづく判断を誘発するような編集を行ってしまっては、かえって丁寧な取材の価値を損なうのではないでしょうか。