「えん罪漂流記」放送からまもなく……(追記あり)

 

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金曜日

さる10月27日に滋賀湖東記念病院事件をとりあげた「えん罪漂流記〜元看護助手が失った16年〜」が放送されました。放送の直前に検察が再審での有罪立証を断念する方針との報道があり、急遽再編集したことが伺える内容でした。

ところが放送からおよそ10日たった昨日、また新たなニュースが。

-京都新聞 患者殺人で無罪示唆の証拠あった「たんで死亡可能性」 元看護助手の再審向け開示

「たん詰まり」による死亡の可能性を指摘した医師の所見が記された捜査報告書が存在しており、それが今回始めて開示されたというニュースです。

もちろんそのような所見が示されたからといって警察としては他の可能性も念頭において捜査を尽くすべきであり、逮捕前に虚偽自白があったことで捜査が誤った方向性に向かってしまったことについては、やむを得ない側面もあったでしょう。番組で虚偽自白の背景としてとりあげられていた発達障害も、発達障害者支援法の制定が2005年であることを考えれば、取り調べにあたって配慮がなかったことが著しく不当であるとは言えないでしょう。しかしこのような捜査報告書が最初から裁判で証拠として開示されていれば、変遷の激しかった自白の信用性の評価にも影響があったことは十分に考えられます。やはり検察が有罪立証に不利な証拠を隠すことを許している刑事訴訟法のあり方(注:追記参照)が問われねばならないでしょう。

また、再審請求の過程で弁護側は「自然死」の可能性を主張してきたわけですが、この捜査報告書は事故死の可能性を示しているわけです。とすると、警察の当初の見込みとは違うかたちではありますが、業務上過失致死が成立する可能性があった、ということになります。これについては、事件の当夜、2時間毎にと指示されていたたん吸引の記録が死亡発覚まで5時間半欠けていたことが、番組でも井戸弁護士によって指摘されていました。もちろん、これはあくまで可能性だけの話で、実際に事故死だったのか、事故死だったとして罰するに値するような過失があったのかどうか……をこれから明らかにすることは非常に困難でしょうが(再審無罪の判決を下すうえで法的に必要なことでもありませんし)。この事件には限らないことですが、冤罪を生む捜査は同時に真相の解明を阻むということですね。

 

追記

8カンテレ(Yahoo! JAPAN ニュース) 11月9日 「【解説】重要証拠を「隠ぺい」か?滋賀県警は西山さんの「12年の服役」に報いる「説明責任」を果たせ

検察の証拠隠しとして書いてしまっていましたが、この記事によれば本件は警察が収集した証拠を検察にすら送っていなかった、というケースとのことです。