「裁判員裁判10年 ~死刑判決はなぜ覆るのか~」
「NNNドキュメント'19」で6月9日深夜に放送された「裁判員裁判10年 ~死刑判決はなぜ覆るのか~」。サブタイトルが示唆するように一審の死刑判決を覆した上級審に批判的なスタンスを基調とした内容だが、私には元裁判員たちの発言よりも元職業裁判官たちの発言の方に説得力があるとしか思えなかった(すべての発言は死刑制度を前提としており、その点で限界はあるが)。元裁判員たちの主張は「(上級審で判決が覆ると)裁判員裁判に意味がなかったように感じる」と言う点に集約できよう。しかしすべての死刑判決が覆ったのならともかく、一部でも覆すのはけしからんということになれば逆に上級審の存在意義が否定されてしまうことになる。他の事件との公平性や死刑の特殊性を強調する元裁判官たちの主張は至極もっともに思えた。一審判決が上級審で覆されること以上に、選任手続きに呼び出されながら無断欠席する候補者が増加しているにもかかわらず罰則の適用例がない、ということの方がよほど制度を空洞化させかねないと思うのだが。
裁判員裁判のメリットとして一人の元裁判官が指摘するのは、調書裁判から公判中心主義に変化したこと、また同業者同士だと端折ってしまう部分まで丁寧に評議されることで、これはこれでうなずけるところはある。
そうすると考慮に値するのは、登場する弁護士の一人が提案する「陪審員が有罪・無罪だけを決定する」制度への変更であろう。それにあわせて遺族の意見陳述を有罪の評決後、量刑判断の前にするのが適切ではないだろうか。