来年こそは再審の扉が開きますように


名張毒ぶどう酒事件については今年の10月に第7次の再審請求が不調に終わり、早期に再審が開かれる見通しは立っていません。年齢こそ奥西死刑囚より一回り若いものの、事態の切迫性という点では劣らないのが袴田巌さんのケースですが、こちらは裁判所の判断を待つだけ、という状態です。大崎事件の即自抗告審では検察が証拠リストを年明けに開示する方針を先日明らかにし、弁護団は3月末までに双方の意見書提出が終わるという見通しを示しています。また松橋事件についても12月9日づけで裁判所が手持ち証拠を開示するよう検察に勧告しており、それぞれ一定の前進が見られました。他方、狭山事件ではすでに130点以上の証拠が開示されましたが、今年10月に行われた三者協議で検察はいまだ未開示の証拠の開示に応じなかったとのことです。
昨年再審開始の決定が下ったものの検察が即時抗告していた東住吉放火殺人事件では、今年5月に検察が(弁護側への反論を目論んで)行った燃焼実験でも自白と矛盾する結果が出ましたが、検察は更なる燃焼実験を目論んでおり、裁判所の判断が注目されています(参考)。
高知の白バイ事故に関しては、今年2月、事故現場で県警が撮影した写真について「偽造」だとする鑑定書を弁護側が提出したことが報じられています。
再審請求が棄却されたことがつい先日(25日)判明したケースもあります。

 1989年に兵庫県姫路市でスナック経営者が殺害された事件で、殺人罪で懲役7年の実刑が確定、服役した姫路市の男性(83)の再審請求について、神戸地裁姫路支部(地引広裁判長)が棄却したことが分かった。決定は10月21日付。弁護人は大阪高裁に即時抗告した。
(後略)
(http://mainichi.jp/select/news/20131226k0000m040121000c.html)

姫路で起きた事件としては、昨年3月にナイジェリア人の元受刑者が再審請求したケースがあります。これについては昨月、服役中の骨折に対する医療不備に関して、慰謝料と治療費などを請求する訴訟を起こしたという報道がありました。

 姫路市で2001年にあった郵便局強盗事件で服役、出所後に無実を訴え再審請求している元受刑者のナイジェリア国籍の男性(37)=姫路市=が神戸刑務所(明石市)に服役中、骨折したのに適切な治療を受けられず後遺症が残ったとして、国に慰謝料や治療費など約4973万円を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に起こしていたことが分かった。


 提訴は8月1日付。訴状によると、男性は07年3月、神戸刑務所内のグラウンドで運動中に転倒し、左肘を脱臼骨折した。所外の病院で専門医の治療を受けたが痛みが再発。診察を再度求めても、すぐに認められなかった。約1カ月後にギブスを外した際、医師にレントゲン撮影を求めたが、同席の刑務官2人が「黙れ」と一喝。男性は刑期を終えた後の09年2月まで専門医の診察を受けられなかった。男性は出所後、手術を受けたが左手握力低下などの後遺症が残り、10年9月に障害者手帳を取得したという。
(後略)
(http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20131123ddlk28040416000c.html)

この事件については昨年夕方のテレビのニュースでやや詳しくとりあげられていましたが、個人的には「鉄板で冤罪」という印象をもちました。
以上に比べると軽微な事件ですが、再審無罪の判決もありました。

八王子市の男性(45)に対する再審の判決で、東京地裁立川支部(菊池則明裁判長)は20日、無罪(求刑罰金20万円)を言い渡した。


 男性は2010年11月14日午前2時半ごろ、八王子市の路上で面識のない女性(当時44)とトラブルになり、女性を転倒させて馬乗りになるなどの暴行を加えたとして略式起訴され、立川簡裁から罰金20万円の略式命令を受け、確定した。


 しかし命令確定後、現場近くで道路工事をしていた作業員が一連の状況を目撃していたことがわかり、作業員は「女性が男性を蹴っていた」と証言。男性は11年に再審を請求し、今年1月に再審開始が決まった。
(http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312210005.html)

また今月に入ってからの報道では、村上正邦元労相がKSD事件に関して再審請求を行ったとのことです。


以上の事件は私が承知している範囲のもので見逃しているものがあるかもしれませんし(再審請求の準備のための接見に拘置所職員を立ち会わせたことやパソコンの資料を認めなかったことの当否をめぐる訴訟については省略しました)、またすべての事件について自ら調べたうえで「冤罪だろう」という感触をもっているわけでもありませんが、一般論としても再審のハードルを無闇に高くすることは正義に反するでしょう。特に袴田事件については、一刻も早い再審の開始を祈りたいと思います。