「志布志事件10年」


4月14日づけエントリのコメント欄にてとらこぞうさんからご指摘ただいておりますように、朝日新聞が4月16日夕刊から全4回で「志布志事件10年」と題する連載を行なっていました(「聞蔵IIビジュアル」で確認したところ、地元鹿児島では17日朝刊からの連載になっており、見出しその他に多少の違いがありましたが、以下は16日からの連載に準拠します)。

  • 4月16日夕刊 (志布志事件10年:1)警察は「うそひいごろ」

冤罪被害者が件に損害賠償を求めた訴訟での、事件の捜査を指揮した県警の元警部らの証言がとりあげられています。この警部が有名になった「たたき割り」という自白強要手法について聞いたことがないとしらを切ったこと、さらに当時の志布志署長がヌケヌケと「真実の供述を得たが、刑事裁判では私どもの主張が認められなかった」「初期の段階から(捜査員が)100人ぐらいいたら違った展開があった」と証言したとのこと。サブタイトルの「うそひいごろ」とは鹿児島弁で嘘つきを意味するそうです。

  • 4月17日夕刊 (志布志事件10年:2)とうちゃんのため、闘う

被疑者とされた夫婦と長男の関係が悪化し「音信不通」になったことが紹介され、逮捕されることがほぼ確実に有罪視されることを意味するこの社会における冤罪被害の深刻さがよくわかります。

  • 4月18日夕刊 (志布志事件10年:3)塗りつぶされた指揮簿

冤罪被害者(被疑者)の支援活動を行ってきた地元の司法書士への取材です。志布志事件のように、強要された虚偽自白がさらなる被疑者をうみ、さらなる虚偽自白をとるための梃子にされる事件では、本来同じように被害者である被疑者の間に対立が生じ得るわけですが、支援団体の存在によって「被害者たちは仲間割れすることなく、立ち向かえた」とされています。サブタイトルは前述の民事訴訟のために県に情報公開請求をして入手した「選挙違反事件についての本部長事件指揮簿」という文書のことです。「すべてのページでほとんどが真っ黒に塗りつぶされ、何が書かれていたか全くわからない」代物だったそうです。県の無責任ぶりが黒塗りされたページから浮かび上がってくるようです。

  • 4月19日夕刊 (志布志事件10年:4)可視化、ワゴン車で訴え

一貫して容疑を否認し起訴猶予処分になったものの、「踏み字」の強要に関して損害賠償請求訴訟を起こして勝訴、「闘いの切り込み隊長になった」人物への取材です。いまもワゴン車で取調べの可視化を訴える活動を続けておられるとのこと。布川事件の桜井さん、足利事件の菅谷さん、氷見事件の柳原さんたちとの新年会に参加したことが紹介されていますが、この3人は4月14日づけエントリでとりあげた『NNNドキュメント'13』の「あたいはやっちょらん」でも、未開示の証拠を検察に開示させるよう裁判所に要請する活動を紹介するシーンで登場していました。