有罪の確信


明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
年末年始は CATV の「AXN ミステリー」チャンネルで『刑事コロンボ』の一挙放送をやっているのでちょこちょこ見ているのですが、70年代につくられた旧シリーズ(このエントリを書いている現在、ちょうど最終話が放映中)の方はその多くを見た記憶があって、懐かしいですね。
でもいま視ると「これ、弁護士ががんばったら無罪になるのでは?」という事件が多いですね。罠をしかけて犯人を自白に追い込む場面が売り物のシリーズですが、アメリカとは司法制度が違うとはいえ日本の最高裁にはこんな判例があります。

裁判要旨
偽計によつて被疑者が心理的強制を受け、その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合には、偽計によつて獲得された自白はその任意性に疑いがあるものとして証拠能力を否定すべきであり、このような自白を証拠に採用することは、刑訴法三一九条一項、憲法三八条二項に違反する。
最判昭和45年11月25日

はっきりと証拠を捏造しているエピソードもありますしね(「ロンドンの傘」)。しかしご存知のように、このシリーズは冒頭で犯行場面が(犯人の正体とともに)呈示されていて、視聴者は容疑者の有罪性をまったく疑わずに結末を見ることになります*1。有罪を確信していると、そうでない場合には許容できないことでも受け入れてしまうという人間の心理が、このシリーズの人気を支えた要因の一つ、ということが言えるかもしれません。

*1:ただし、被疑者が双子で「どちらが犯人か?」という謎を残すエピソードのような例外もあります。