氷山の一角

 しかし、検事が読み聞かせた調書を確認する場面が録画されたDVDには、「火がどうなるところまで見たのかな」と尋ねる検事に対し、男性が「……え、と……」とうまく答えられない場面や、男性が検事の言葉をおうむ返しにする状況が映っていた。


 火が広がった状況についても男性は当初、「見てなかった」と答え、これに対して検事が調書内容に合うように「見てたんか」「見てたのでいいのかな」と繰り返し質問。男性が「はい、見てた」と翻す場面も残っていた。


 一方、自白調書には、男性の事件への関与の有無を確認するために、検事が送検後の男性に「君が火をつけたのではないのではないか」と質問したと記載されていた。この質問方法について、地検の補充捜査で意見を求められた警察庁科学警察研究所の技官が「男性の障害を考慮すれば二重否定の質問は不適切だ」と指摘したという。

受刑者に占める知的障害者の割合から推して、このような場面は少なからぬ数の取調べで起きていると考えるべきだろう。地検の次席検事は「捜査自体は違法ではなく、起訴当時の判断には問題はなかった」とコメントしているというが、たとえ「違法」でなくても虚偽自白を生じさせかねない取調べ方法が不適切であることは言うまでもない。冤罪とまで言えなくても動機などに関して被疑者(被告人)に不利な供述調書がつくられるおそれがある、ということにも注意が必要だろう。


追記:この事件については以前にも当ブログでとりあげておりました