悪あがき(追記あり)


産経はあらゆる機会を捉えて「定住外国人地方参政権違憲」というデマを宣伝するつもりのようです。

 16日に実施された大学入試センター試験現代社会の問題の中で、最高裁外国人参政権をあたかも憲法上問題ないと容認する立場であるかのように判断させる記述があり、インターネットの掲示板などで批判の書き込みが相次いでいる。識者からも「不適切」との声があがっている。(安藤慶太


 問題は、日本の参政権に関する記述として「適当でないもの」を4つの選択肢の中から選ばせるもので、憲法改正国民投票の投票資格や被選挙権の年齢などをめぐる選択肢とともに、「最高裁判所は外国人のうちの永住者等に対して地方選挙の選挙権を法律で付与することは憲法上禁止されていないとしている」と書かれていた。
 問題の正答は、「衆議院議員選挙において、小選挙区で立候補した者が比例代表区で重複して立候補することは禁止されている」という明白な誤りの記述で、外国人参政権に関する選択肢は「誤りではない」ことになっている。
 選択肢で扱われた記述は平成2年に大阪で永住資格を持つ在日韓国人らが選挙権を求めて起こした訴訟の7年2月の最高裁判決を踏まえたものとみられる。
 判決では「参政権国民主権に由来し、憲法日本国籍を有する国民に限られる」とする従来の判例を維持。上告を棄却し、原告側の敗訴が確定していた。
 ただ、判決の傍論で「法律で、地方自治体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」と記述。これまでも、この傍論が「最高裁は外国人の地方参政権の付与に対して違憲ではないと判断した」などと強調され、推進する立場の人たちによって外国人参政権付与の根拠として持ち出されてきた経緯がある。
 この選択肢の記述には出題終了後からネット上で出題内容が不適切だとする批判が起こっている。
 百地(ももち)章日大教授(憲法学)は「不適切な出題。外国人参政権付与に法的にも政治的にも多くの批判があり、まさに今重大な政治的争点になっている。判決自体はあくまで憲法に照らし認められないという立場なのに、傍論の一節のみを取り上げて、最高裁の立場とするのはアンフェアで一方に加担している」と話している。
 大学入試センターは「試験問題は教科書を基礎として出題している」とし、この設問については「多くの『現代社会』の教科書で言及されているこの最高裁判決を、選択肢の一つとして取り上げた」とコメントしている。

yubiwa_2007 さんが過去に紹介されたように外国人地方参政権問題はセンター試験どころか司法試験でも「立法許容説」の立場で出題されている。「識者からも「不適切」との声があがっている」っていうけど、その「識者」って例によって百地教授。自分の学生には「立法許容説は間違い」って教えるんだろうかw 相も変わらずの「傍論だから」論法なんだけど、かつて

憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。

という判断を下した最高裁が、実際に外国人地方参政権が立法されそれを違憲とする者が訴訟を起こしたとして、手のひらを返したように「やっぱ違憲」と判断する可能性がどれくらいあると思ってるんだろうか。これがまあ、当該部分に意見、反対意見がいくつもついた判決だったとすれば、最高裁判事の顔ぶれが変わると結論も違う可能性はそこそこ出てくるのだろうが、平成7年02月28日に最高裁第三小法廷で出た判決は全員一致なんですな。うえで引用した箇所の論旨にはトリッキーなところは何一つなく、極めて常識的なもので、これに反対する人間が最高裁の判事にわらわらとなってゆく、なんて事態を想定するのはかなり自虐的なことだと言わねばならんでしょう。


追記:しかし仮にも全国紙が「ネット上で出題内容が不適切だとする批判が起こっている」って、情けないにもほどがあるよね。「憲法学会で出題内容が不適切だとする批判が起こっている」とかなら分かるけどw