再逮捕の容疑はどうなるだろうか

「「民主党をやっつけたかった」という趣旨の供述」をしているが持っていたのは「長さ約50センチの木刀のようなもの」とのこと。刑法39条をめぐる問題については関心がないわけではないけれども現時点では積極的にコミットしていることでもないので、以下は責任能力には問題がないという仮定(あくまで仮定)でのはなし。
「やっつけたかった」という供述をとられてしまうと事は建造物侵入ではすまなくなる可能性が出てくる(民主党の意向と警察の意向にもよるけれど)。しかしもちろんのこと、犯人が「民主党をやっつけたかった」という意図を明確に自覚しており取り調べでもそれを積極的に語った・・・とは限らない。持っていたのが包丁ですらなかったことを考えると、自分でも何をしたかったのかはっきり意識化できていないというのも、かなり蓋然性のあるはなし。その場合、もちろん取調官は「何をしたかったのか、自分でもよくわかりません」では納得はしないからあれやこれやと水を向けて「民主党をやっつけたかった」という供述をとりあえずとった・・・としても不思議ではない。取り調べる側には、なるべく重い罪になるような供述をとったほうがお手柄という感覚はあるだろうし(またそれを一概に責めるわけにもいかないが)。
犯罪者が取り調べでシラを切りまくることを推奨するわけではもちろんないけれども、意図に関わる供述はちょっとしたニュアンスの違いでえらく結果が違ってきかねないのだから、当時の自分の心理状態について自分の言葉で言語化できるようになるまでは軽々に供述しないほうが身のためだろう。
他方、動機なんてものは“心の中”に実体として存在しているわけじゃないから、“自分の胸に尋ねてみたら”答えは自ずと明らか、というわけにはいかない。言語化が苦手な人間の場合(言語的な自己表現が得意な人間なら木刀「のようなもの」もって突入、といった稚拙なことはしないだろう)他者とのコミュニケーションの中で自己理解に至るしかないということもあるだろう。だがその他者がもっぱら取調官ということになると、事件の処理に都合のいいほうに引っぱられるおそれは無視できない。不埒な奴には片っパシから懲役喰らわせてやれ的発想ならそれでもいいということになるが、警察が供述を固めてしまう前に被疑者に敵対的でない立場の人間が被疑者と実質を伴ったコミュニケーションの機会を持てなければ、ステレオタイプ的な“真相”が明らかにされて一件落着、てなことになりかねない。