今日はどじょう絡みの話題から

 仙台市で開かれた政府の意見聴取会で、出席した東北電力の幹部社員が原発を推進する意見を述べたところ、会場が騒然となり、「やらせではないか」と紛糾したそうである。

 事態を受けて政府は電力会社や関連会社の社員による意見表明を認めない方針を決めてしまった。野田佳彦首相は「疑念をもたれることはあってはならない」と述べたそうである。

 このニュースを見ていて、おかしい、と思った。なぜ電力会社の関係者という理由だけで意見表明が制限されなければならないのだろう。

質疑応答では、政府が電力業界に意見聴取会での意見表明自粛を求めたことに、電源開発(Jパワー)社員が「私たちは国民ではないのかと非常にショックだった」と発言した。

すでに別館でも述べましたが、この問題を考える際のポイントの一つは意見聴取会の趣旨をどう考えるか、です。意見発表のルートを別にもつ個人や団体の意見ではなく、そうしたルートをもたない市民に意見公表の場を与えるのが目的なのであれば、電力会社社員を排除することには合理性がありますし、また同じ理由で例えば原子力資料情報室の関係者にもご遠慮願う、ということでかまわないでしょう。この点について政府の事前の説明は必ずしも明確なものだったとは言えないところがありますが、「この選択肢について国民の皆様より御意見を直接いただく」*1という表現が、専門家や利害関係者の参加を積極的に想定しているとはちょっと思えません。
まあ首相が気にしているのが「疑念をもたれること」だとするなら、意見聴取会の茶番性を浮き彫りにするためには電力会社社員にばんばん発言させるべきだった、という見方もあるでしょうが。
さて、「私たちは国民ではないのかと非常にショックだった」という発言に同情の涙を流している方もおられるようです。しかし「国民の皆様より」に類する呼びかけによってあらかじめ排除されるという経験を繰り返し強いられている人々もまた、この社会の一員である、ということも忘れずにいたいものです。脱原発派の中でも「国民運動」を標榜する声がでかいというのが実態ですから、なおさらです。

*1:http://kokumingiron.jp/ しかしなんという URL だろうか……。