ひどすぎるうなぎ報道の中でも最低クラスの「ミヤネ屋」7月18日放映分


TBS系列MBSの夕方のニュース番組「VOICE」は今日、うなぎをとりあげてましたが、マダガスカル産うなぎに期待する人々を紹介する一方、「世界的に見れば供給量の3.5%ほどで、危機的状況にあることは変わりありません」とも付言、さらには“うなぎに代わるスタミナ食”を紹介するという、比較的真っ当な内容でした。要はイミダゾールジペプチドイミダペプチド)を多く含む食材がいい、というはなしです。ただ、取材対象者の研究者が列挙した食材の中にマグロやカツオが入っていたのが玉に瑕です。ちなみに、今日はイミダペプチドを多く含む食材の代表格、鶏の胸肉を買って来て塩麹に漬けました。明日食べる予定。


さて、一昨日の「ミヤネ屋」の件です。うなぎコーナーの概要は以下の通り。

うだるような暑い夏の元気の源といえば……そう、うなぎ。今や価格の高騰で、少〜し遠い存在になりがちなうなぎだが……。さらに追い討ちをかける出来事が!

という出だし。「庶民の食卓からウナギが消える!?」と煽ります。
ついで、アメリカがワシントン条約によるウナギの国際取引規制を検討中、という紹介。
背景知識として「稚魚の総量と価格動向」というグラフが呈示されるのだが、2003年以降のデータしか示されないので、かつての漁獲量と比べてどれほど激減しているのか、理解できなかった視聴者が少なくなかったのでは? 「解説委員」の春川正明が「これだけ減ってくると食生活に影響出てきますね」とコメント。いやいやいや、生態系や生物多様性への影響に比べれば、食生活への影響なんて無視できるほどですから。
ついでワシントン条約の解説。「絶滅のおそれがあり保護が必要な野生動物や植物の国際取引を規制する条約」、と。うなぎは「二国間の合意が必要」なカテゴリー(附属書IIのこと)。ここで「突然ワシントン条約って出てきてわれわれびっくりしたんですけど」と司会の宮根誠司がコメンテーター・手島龍一に振る。ここからがすごい!
「ええ、ワシントンというのが味噌なんですね」といきなりのドヤ顔コメント。「ワシントン条約」って、単に(国際条約ではよくあるように)採択された都市の名前を冠しているだけなんだけど、そこにどんな「味噌」があると言うの? それは本当に味噌? ウンコじゃなくて?

つまり超大国が実際のところ仕切ってる、ということになりますから。アメリカとしては、あまりうなぎはアメリカ人、食べませんよね? だからこういうところで規制を強めていくっていうことで、あんまり困らない。つまり、条約とはいっても、やっぱり国際政治の駆け引き、ということになるかと……。

はい、ウンコでした。それもうずたかく積み上がった糞の山でした!
ついで、クロマグロの規制が実現しなかったという事例を宮根が持ち出し、進行役が「そうなんです、だからまだこれはわからないんです」と、規制が実現しないことを希望する態度がありあり。
次に、日本で流通するウナギの7割が輸入もの、そして輸入物の99%が中国から、という情報。なぜ中国からの輸入が圧倒的か? 第一は中国がヨーロッパウナギアメリカウナギの養殖に成功したから(日本ではうまくいかなかった)。第二はもちろんのこと、コストカット圧力のため。しかし当然こんな事情は番組では紹介されない! 「ということは……中国と話し合わなあかんのですね」と、中国脅威論に。「レアアースの話しもありましたけれども、中国が出さないよ、と言うとまったく入ってこなくなるかもしれない」! レアアースと一緒にするか!? 「中国との国際問題になりかねないですね」と話しを振られた女性ゲストが「なんだかいろいろなもの、中国ってやっぱりもってるんですね」と的外れもいいところのコメント。中国(企業)がもってたのは欧米ウナギの養殖ノウハウだけ! シラスはヨーロッパやアメリカから、需要は日本からやって来たの!
「だから、中国以外からウナギを探さないといけない」ということになった……として紹介されるのが、もはや当ブログの読者の方にはおなじみ、マダガスカル産のうなぎ! 「うなぎにとって救世主」ですと! 2000年ほど前に「救世主」と言われた男は「人の子は祭司長、律法学者らに引き渡され、彼らは人の子を死刑に断罪し、異邦人に引き渡すであろう。そして彼らは彼を嘲弄し、つばを吐き、鞭打ち、殺すであろう」(マルコ10:34、田川建三訳)と予言したが、マダガスカルウナギの運命もまたかくの如くか。一つだけ違うのは「そして三日後に復活するであろう」という予言は今回は成就しない、ということだ。
従来マダガスカルのウナギがヨーロッパに輸出されていたという件について、「手嶋さん、ヨーロッパ人ってウナギ食べるんですか?」「ええっ、あの稚魚がフランス料理なんかではすごく高級な……」「ああ〜」……いや、ウナギのシラスの料理とくればまず有名なのはバスク料理でフランス料理じゃないだろ。で、とどめは「一つだけ注意事項があって、中国が99%、いま独占してますよね? レアメタルと同じなんで、中国がマダガスカルに結構影響力がありますから、ここは日本の商社の出番です」「押さえられてしまうと同じことになりますから」というテッシーのコメント! 最初から最後まで、うなぎという生物の保護という観点はこれっぽっちもありませんでした。あるのはアメリ陰謀論と中国脅威論だけ。