とあるCMについて

昨晩テレビを見ていたらセブン・イレブンの「セブンプレミアムゴールド」なる製品群(品名を確認できたのはビーフシチューとハンバーグステーキ)のCMが流れた(1月10日までの放送とのこと)。
(1)都市の夜景
(2)託児所(?)に子どもを迎えにきた女性→手をつないで建物の外に出る母子
(3)絵画教室(?)で絵を描いている女性(たち)
(4)タマネギをみじん切りにする手元・鉄板で焼かれるハンバーグ・ドミグラスソースに調味料を入れる手元
(5)箸でハンバーグを割る手元
(6)二人の子どもを自転車に乗せてコンビニにやってきた女性
(7)棚から商品をとる女性
(8)夫婦+子ども2人の食卓風景(食べる男児・食卓を上からパン・再び男児男児の口元を拭う母親
以上のような展開にあわせて次のようなナレーションとバックグラウンドの音楽(チューリップの「青春の影」という歌らしい。ネットは便利だ)が流れる。

自分の時間をあきらめたくない そんなママたちへ びっくりするほどジューシーな本格ハンバーグなど 素材とおいしさに贅沢なこだわり 「セブンプレミアムゴールド」シリーズ、新発売です 日本のおいしい食卓へ(後略)

自分の大きな夢を追うことが 今迄の僕の仕事だったけど 君を幸せにするそれこそが これからの僕の生きるしるし

(1)の女性は「仕事帰り」をイメージさせる、また夏や真冬ではない服装。時刻は夕方をはっきり過ぎて夜。(4)は“手作り感”を演出するためのカットで、家庭の情景ではない。
全編を通じて父親(男)は食卓を上からパンするカットでちらりと映るだけの、顔のない存在(もちろん子どもと関わるシーンはなし)。ナレーションでも「ママたち」への呼びかけ。それでいて背景の音楽は“妻の幸福に責任をとろうとする男”の歌。裏を返せば、妻はその幸福の責任を夫に背負ってもらわねばならない存在であることが示唆されているわけだ。30秒の間に現代日本の標準的な家族イデオロギーがばっちり表現されている。
そうしたCMはもちろんこれ一本ではないけれども、入れ替わり立ち替わり「(選択的)夫婦別姓で日本は終わる!」とか「夫婦別姓は家族を解体し日本を中国に売り渡すための左翼の陰謀!」などと叫ぶ人々が登場する小倉秀夫さんのツイッターのTL(って言うんだっけ?)を拝見した直後だったので特に印象に残ったのだろう。第一に、これだけ毎日毎日メディアで刷り込まれている家族イメージが選択的夫婦別姓制度ごときの導入で揺らぐわけないだろ、と。これは家族イメージの多様化を望む側にとっては「残念ながら」と評さねばならない事態だが。第二に、「別姓で日本終了!」な人々の多くはおそらく料理を手作りして夫や子どもに食べさせる妻=母親を望むと思うのだが、そういう人々は「女性の労働市場への進出」*1サヨクの陰謀によってではなく外食・中食産業の市場拡大や男性の雇用の不安定化によって支えられ、かつ要請されていることについてどう考えているのかなぁ、と。

*1:しかも「男並みの働き方」での。だって、明るいうちに託児所に子どもを迎えにいけるようなら、料理を作る時間が余っちゃうから。