やっぱり裁判所の姿勢が肝心

今朝の朝日新聞(大阪本社)朝刊に「遠のく取り調べ可視化」と題して、千葉法相が慎重姿勢に転じたことなどを伝える記事が掲載されているが、それと同時に08年に取り調べの録音・録画を法制化した韓国の事情が紹介されている。録画は義務ではなく検察官の裁量によって行なわれるが、「被告が裁判で検事調書の内容を否定した場合には、録音・録画していなければその調書を証拠として使えない仕組み」になっているとのことで、検察側が録音・録画へのインセンティヴをもつような制度になっているようだ。法制化にあたっても「韓国と日本の違いは、捜査当局が積極的に可視化を進めている点だ」とされている。

 きっかけは、04年に最高裁が捜査段階よりも公判段階での供述を優先する判決を出したことだった。捜査の成果が認められなくなると心配した検察が、調書を証拠として認めさせることと引き換えに法制化に動いた。

日本の刑事訴訟法でも調書は320条の原則(伝聞法則)に対する例外として証拠とされるような位置づけになってはいるが、実際の裁判では否認事件でも捜査段階での調書が有罪の証拠とされるケースが多々あること、それが冤罪の原因となっていることは周知の通り。裁判所が(否認事件での)調書の証拠能力や証明力に対して厳しい態度をとれば、警察・検察も取調べの可視化に応じることに利益を見出すようになるのではないか。