映画よりよくできた悪役

パニック映画には事態を悪化させたり解決を妨げる人物がつきもの。主人公が立ち向かう困難が純粋に非人為的な要因だけから成っていたら盛り上がらないですからね。やはり主人公ないし主人公を支援する脇役があくどい重役やら事なかれ主義の官僚やらを怒鳴りつける場面があってこそ観客の溜飲も下がるというもの。
アンストッパブル』の場合はちょっとこの点が弱くて、というのも会社の経営への影響を最小限に抑えるためには周辺住民への影響を最小限に抑えるしかないという判断が比較的速い段階で下ってしまうので、主人公との対立点は列車を止める手段に関するテクニカルなものに限られてしまうから。悪役としてのスケールはこちらの方がよりデカイです。

 新潟県が10年に実施した避難訓練について、地震災害と原子力災害の同時発生という想定は「住民に不安と誤解を与えかねない」という趣旨の助言を経済産業省原子力安全・保安院が同県に対ししていたことが、政府の「事故調査・検証委員会」(畑村洋太郎委員長)の調査で判明した。その後、同県は地震災害の想定を取りやめ、雪害と原子力災害の複合災害に改めた。保安院原発の「安全神話」を県側に押しつけた格好で、事故調は保安院の姿勢が福島第1原発事故での被害拡大につながった点がないか、さらに調べる方針だ。
(後略)

すばらしいですね。「住民に不安と誤解を与えかねない」! 映画だったら観客に「ああ、こいつのせいでひどいことになるのか」と一発で了解させる台詞です。