「時効廃止で冤罪が増えてもいいのか」


今日、2月20日朝日新聞(大阪本社)「オピニオン 異議あり」欄に、「時効廃止で冤罪が増えてもいいのか」と題して元法制審議会委員の岩村智文弁護士へのインタビューが掲載されている。法務省・法制審議会刑事法部会での公訴時効廃止を巡る議論について。

 「(…)例えば、被告がアリバイの主張をしたいと思っても、事件から40年、50年たってから起訴されて、アリバイを証言してくれる人を見つけられると思いますか」

40年、50年前のこととなると、そもそも自分自身のアリバイを思い出すこと自体が困難だろう。

 「それに、なぜ今急いでやるのか。世論を受けて、2004年の刑訴法改正で、殺人などの時効は15年から25年に延長されるなど厳格かが行われました。それから6年しかたっていません。改正以降に発生した殺人事件はまだ1件も時効になっていませんから、改正による捜査や裁判への影響や効果も検証できていない。そんな段階で再改正を議論すること自体おかしい」

これも至極もっともな反論。
以前に書いたことと関連する「異論」の紹介。

 「それに、学者出身の委員は逆に『時効がなくなると犯人が名乗り出る可能性がなくなるのでは』と述べてますよ。部会の議論を聞く限り、時効廃止で事件の解明が飛躍的に進むことはない」

日弁連出身の委員が提案した対案は次のようなものだという。

 「日弁連出身の委員が、犯行現場に犯人のDNAが残されているなど有力な証拠が見つかった場合、検察官が時効の中断を求める公告を行うことが出来るようにする対案を部会に提案しました。(後略)

つまり、証拠が適切に保管されてさえいれば時間が経っても冤罪を生みだす恐れのない事件に限って時効を停止できるようにする、ということだろう。実際問題として、事件から30年、40年経ってから検挙される可能性があるとすれば「犯行現場に犯人のDNAが残されているなど」のケースに限られるだろうから、この対案は時効制度廃止とほぼ同じ効果をもちながら冤罪を生みだすリスクを相当程度減らせる、合理的なものではないだろうか。