『供述調書作成の実務』
この本館に頂戴したブクマを一覧するページに掲載されているグーグルの広告は、いまこれを書いている時点では次のようになっている。
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被疑者側と捜査側双方のニーズに対応した見事な広告だが(笑)、近代警察社(ってすごい社名だな)のサイトを見ると『供述調書作成の実務』なる書籍のポイントは次のようなものとされている(改行は原文ママ、強調は引用者)。
捜査は、裁判において、適正な事実を認定し、かつ適正な量刑を得ることが最終目標であり、そのためには、まず被疑者を取り調べて真実を供述させることが事件の真相を解明する上で重要である。そして、その被疑者の供述を証拠とするためには供述調書を作成して、裁判の場に提出しなければならない。供述調書は、証拠となるものであり、裁判官に読んでもらい、納得してもらえるものでなければ意味がないのであり、供述調書の作成にあたっては、取調官において犯罪の構成要件を正確に把握した上、被疑者の供述をありのままに録取するとともに、犯行の動機、犯意、犯行状況など、それぞれの構成要件に即した要点を的確に押さえた供述調書を作成することが必要である。
まずもって、このような作業が今日の捜査の現場で必要とされているのだという現実は認めたうえで、しかし強調部分をよくよく読めばそこにはある種の緊張関係がはらまれていることがわかる。「被疑者の供述をありのままに録取」したのでは裁判官に「納得してもらえ」そうにない時(しかしそんな時がないと誰に言えよう?)、あるいは「被疑者の供述をありのままに録取」したのでは「構成要件に即した要点を的確に押さえた供述調書」になりそうにない時。一問一答式でない、取調官によってまとめられる調書には、“裁判官に納得してもらう”“構成要件に即した要点を押さえる”という目的のために“ありのままに録取”が二の次にされるおそれが常にあるのではないのか。もちろん、多くの事件では実質的な問題は生じないだろうこと、冤罪ないしそれが強く疑われるケースが稀であることは承知しているが。
しかし、いかに稀とはいえ、例えば新潟の少女監禁事件(9年余)が社会に与えたセンセーションを考えるなら仁保事件(逮捕から無罪確定まで17年)や甲山事件(同じく25年)が元被疑者(被告)に与えた苦しみはいくら強調してもし足りることはない。冤罪が晴れるまでさらに長い時間がかかったケース、あるいは生きて無罪を勝ち取ることができなかったケースがあることを思えばなおさらである。