『冤罪をほどく』

金曜日

湖東記念病院事件で、西山さんがまだ服役中だったころから取材を開始していた中日新聞取材班の取材過程が昨年暮れに書籍となり、本田靖春ノンフィクション賞を受賞しました。

-中日新聞編集局滋賀・呼吸器事件取材班デスク秦融『冤罪をほどく “供述弱者”とは誰か』、風媒社

サブタイトルにある「供述弱者」というフレーズは、秦氏による Forbes Japan での連載にも用いられていたものです。

forbesjapan.com

受賞をうけた秦氏(この時点ではすでに中日新聞社を退社)へのインタビュー記事がこちらです。

toyokeizai.net

「死刑執行は正しかったのかⅢ」(追記あり)

水曜日

飯塚事件の場合「自白」はありませんが冤罪事件/冤罪疑惑事件を扱う際のタグとして「自白の研究」を用いています。)

9月25日(日)24時55分から放送の「NNNドキュメント'22」は「死刑執行は正しかったのかIII〜飯塚事件・真犯人の影〜」です。

www.ntv.co.jp

飯塚事件については先日NHKでも「正義の行方〜飯塚事件 30年後の迷宮〜」が再放送されたところです。

 

追記

2時間半もの長尺だったNHKの「正義の行方」には及ばないものの通常の倍の55分枠での放送。DNA鑑定の問題点、峠での目撃証言への疑問など重複する論点も当然あるが、番組の後半で“新たな目撃証言”に焦点を当てていたのが特徴の一つ。

www.nishinippon.co.jpアーカイブ

もう一点、死刑執行に関する公文書を開示請求してみせたのがこの番組の見どころ。「〔殆どが黒塗りで開示された公文書、〕このどこかに、死刑執行後に排除されることになる、DNA型鑑定も記されているはずだ」というナレーションが重い。

水産資源関連記事3つ

火曜日

ちょっと前の記事ですが、農水省の統計で昨年の漁獲量が比較可能な統計のある期間において最低を記録したとのことです。もちろん、資源管理のための漁獲制限のおかげではなく、資源状態の悪化のためです。

 農林水産省が27日発表した2021年の漁業・養殖業生産統計によると、養殖を含む漁獲量は前年比1.4%減の417万3千トンだった。比較可能な1956年以降で最低を更新した。魚種別では、サンマやスルメイカ、タコ類が最低となった。

www.47news.jp (アーカイブ

特にサンマ、スルメイカ、タコ類が最低になっているとのことですが、これらは鮮魚売り場を歩いているだけでも資源状態の悪化が見てとれるものです。

サンマと違って脂がのった魚が獲れれば安心というわけでもありません。

jp.reuters.com

水温の上昇が漁獲されるカツオの重量増につながっているとみられ、とするとさらに水温が上昇することで現在の漁場から姿を消すことが危惧される、というわけです。

では水産業界の認識はどうなのか。

www.huffingtonpost.jp

この記事で紹介されている片野氏ですら15年前まで「日本の水産業に対して「乱獲(獲りすぎの状態)」という感覚を持ったことはなかった」というのにはちょっとびっくりします。このブログの前身で井田徹治氏の『サバがトロより高くなる日』(講談社現代新書)をとりあげたのは2005年のことでした。

うなぎ絶滅計画、今年も進行中

月曜日

うなぎは家族で豪勢に 「丑の日」商戦本格化―スーパー・百貨店:時事ドットコム

時事通信「うなぎは家族で豪勢に 「丑の日」商戦本格化―スーパー・百貨店」

もう二度と紙面に「SDGs」などと載せるなよと毒づきましたが、こちらの記事は高価な商品の需要を伝えている分まだちょっとマシでした。

松のや・松乃家 うなぎ×とんかつ「うなかつ丼」発売、うなロースかつ丼・うなヒレかつ丼/松屋フーズ|食品産業新聞社ニュースWEB

食品産業新聞社「松のや・松乃家 うなぎ×とんかつ「うなかつ丼」発売、うなロースかつ丼・うなヒレかつ丼/松屋フーズ

業界紙ならせめてウナギのカジュアル消費について問題提起してみせてはどうですかね。

 

先日は普段の買い物先の一つで「無駄にしていませんか?半助」なるポップを見かけました。「半助」というのはウナギの頭のことで、これで半助豆腐をつくれば「MOTTAINAI精神発揮」だというわけです。半助一つにつきウナギ一尾が死んでるんですけどね。

奈良県警が警察官に「自白強要」

金曜日

そもそも「事件」が存在しなかったという、お粗末極まる冤罪未遂事件です。

nordot.appアーカイブ

本日付の産経ニュースによれば奈良西警察署の副所長らが訓戒処分とのことですが、処分理由は紛失していない銃弾を紛失したと誤認したことについてのようです。県警は休職中の被害警官に対して謝罪したとされていますが同時に「法と証拠に基づいて〔捜査を〕実施した」とコメントしています。しかしそもそも「事件」が存在しなかったのに、どんな「証拠」に依拠したというのでしょうか?

大崎事件第4次再審請求審、不当決定

金曜日

去る6月22日、鹿児島地裁は大崎事件の第4次再審請求を棄却する決定を下しました。

mainichi.jp

再審で検察が有罪立証を放棄するケースが度々あり、再審請求審が事実上の再審の場となっていることの弊害という側面もあるように思います。本来なら再審の場で改めて有罪か無罪かが判断されるのですから、再審決定のハードルはもっと下げられるべきです。

弁護団事務局長の鴨志田裕美弁護士に関する大久保真紀・朝日新聞編集委員の記事。署名記事にさらにコメントプラスで補足するという熱い記事です。

digital.asahi.com

元裁判官有志10名の記者会見についての記事。

www3.nhk.or.jp

今市事件、本田克也元教授らの見解

木曜日

過去にこのブログで2度ほど言及した今市事件について、DNA鑑定で足利事件の再審無罪を導いた本田克也・筑波大元教授らが発言している動画がありました。

www.youtube.com

本田元教授が指摘したのは(1)被害者の遺体に付着していたガムテープから女性と思しきDNAが検出されたこと、(2)排除されたガムテープの鑑定結果はコンタミがあったとして証拠から排除されたが、服役囚が真犯人であればそのDNA型は検出可能、(3)被害者が女児であったため性的暴行目的の犯罪=犯人は男という前提で捜査が行われたが、解剖所見はそうした前提を支持していない、といったことです。もうひとりのゲスト、元徳島県系科捜研研究員の藤田義彦氏も、捜査当局は都合のよいときにはコンタミのあった鑑定結果でも証拠とするのに都合の悪いときはコンタミを理由に証拠として出さない、というダブル・スタンダードを指摘しています。