今週はNHKが冤罪疑惑事件についての番組を2本放送します。いずれも自白のない事件ですが、便宜上「自白の研究」タグを用いています。
名張毒ぶどう酒事件第10次再審請求を名古屋高裁が棄却
昨日3月3日、名古屋高裁は名張毒ぶどう酒事件の第10次再審請求審(異議審)において最新を認めない決定を下しました。弁護側は特別抗告する方針です。
再審請求が第10次にまで及んでいることは、この事件に関心のないひとにとってみれば「無理筋の再審請求をいつまでも繰り返している」ように見えるのかもしれません。しかしそもそもこの事件、証拠調べをもっとも丁寧に行う第一審では無罪判決が出ています。それくらい直接的な証拠に乏しかったということを前提に、今回の決定も評価する必要があります。
しかも問題なのは、弱い証拠をつなぎあわせて有罪判決に至る際に、被告人(元死刑囚)に有利な証拠を隠している点です。『東京新聞』が証拠開示に後ろ向きな検察を批判する社説を掲載していました。
東住吉事件国賠訴訟、大崎事件第4次再審請求
東住吉事件と大崎事件に関する最近の動向です。
まず青木恵子さんが起こしている国賠訴訟については、裁判所が和解を勧告したものの、被告側の拒否により決裂となる見通しです。
当初私も「和解なんて勧告せずにさっさと原告勝訴の判決を出せばいいのに」と思っていたのですが、勧告案には原告青木さんを「冤罪被害者であると確認」すること、国や府が「厳粛に今回の問題を受け止め、再発防止に努める」とする内容が含まれていたとのことです。
原告勝訴判決では賠償金の支払いを命じることはできても国や府の認識に関してなにかを命じることはなかなか難しくなります。裁判を早期に終結させる以外にも和解の“使い途”はあるのですね。
また大崎事件は第4次再審請求が最終段階を迎えました。
弁護側が最終意見書を提出、今月の28日までには検察側も最終意見書を提出する見通しで、あとは裁判所の判断を待つだけとなります。
坂本敏夫元刑務官、袴田事件を語る
『文春オンライン』に、元刑務官の坂本敏夫氏に取材した木村元彦氏の記事が掲載されています。
拘置所の対応についてのはなしはほとんどが初耳でした(予想外ではありませんでしたが)。
袴田さんがクーラーを初体験して驚いていたという逸話で、以前に見たアメリカの冤罪に関するドキュメンタリーの一場面を思い出しました。