どうせ吊るすつもりの奴に説教して楽しいのか?

 東京・秋葉原で17人が死傷した無差別殺傷事件で、殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大被告(27)に対する4日間、計17時間に及んだ被告人質問が3日、東京地裁(村山浩昭裁判長)で終了した。「派遣切り」や容姿への劣等感が事件の背景にあるとする検察側主張を、加藤被告は全面否定。インターネットの掲示板トラブルを唯一の原因と強調し、動機を巡る検察側との主張の違いが浮き彫りになった。


 この日の公判では検察官が「模倣した事件が起きていることをどう思うのか」「事件は社会のあり方を変えてしまったのでは」と追及。「申し訳なく思う」と繰り返す被告を「どうして見ず知らずの人に痛みを残すことに思いが至らないのか」と叱責(しっせき)した。


 「(ネットの掲示板への)『荒らし』や偽物に嫌がっていることを伝えたかった。動機がそれだけかと言われれば、それだけです」
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 検察側は冒頭陳述で、仕事が不安定なことや容姿に対するコンプレックスを掲示板に書き込んだのに思いやりのある反応が得られなかったことが事件の背景にあると指摘。事件直前に工場の作業着が見つからずに怒りを爆発させ、事件を起こすことを決意したとの構図を描いた。


 だが、加藤被告はこれを否定。「派遣切り」などの要因を動機から排除すれば情状面で不利になる可能性もあるが、弁護団関係者は「被告は『動機が掲示板のみ』ということにこだわっている」と話す。一方、検察側は法廷で「女性問題などを隠して格好つけようとしているだけではないか」と強く反発した。
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「どうして見ず知らずの人に痛みを残すことに思いが至らないのか」と叱責って、これで求刑が死刑だったら(というか死刑だろうという想定でこのエントリ書いてますが)やりきれんな。死刑というのはその犯罪者が道徳的主体であることを否定するってことであるわけで、お前は一体誰に説教しているつもりなんだ、と。
情状面で有利になるような嘘をついている可能性があるならそこを突くのは検察の仕事のうちだろうし、無期懲役以下の求刑を予定しているなら動機に関する被告人の自己欺瞞を問題にするのもいちおう理解はできる*1。しかし仮に動機に関する被告人の供述に自己欺瞞が現われていたとしても、この場合「情状面で不利になる」ようなものなんだから、放っておけばいいじゃない。どうせ吊るすつもりなんだし。

*1:以前にも述べたように、私は裁判で動機を重視することに意味はないと考えているが。あえて素朴に「真の動機」という表現を用いるとして、そんなものは裁判という場で明らかになるものではない、と。