兵庫県小野市が「ディストピア自治体」競争に参入


女性週刊誌が種をまき片山さつきが水やり草抜き施肥して大事に育てた木が、来年度(8月)からの生活保護(生活扶助費基準額)の引き下げに続き、また実を結びました。ええ、あの小野市のクソみたいな条例のことですが。
人権侵害につながる恐れが極めて高い一方、政策としての合理性などカケラもないこんな愚挙がやすやすと(委員会では全会一致、本会議では反対は1名のみ)成立するとは。実に月並みですが大変な時代になったものです。

誰のためのサバイバル・ガイド?

いえ、いまさらのはなしなんですが、サンデル先生のベストセラーのサブタイトルの件です。原題は Justice: What's the Right Thing to Do? ですからサブタイトルは「なすべき正しいことはなにか?(なにをするのが正しいことなのか?)」の意です。でもこれが邦訳だと「いまを生き延びるための哲学」というサブタイトルになってる。ずいぶんと志が違うような気がしませんか?
こんなこと書くと、きっと「売らんがための邦題に文句つけてもしかたないじゃん」と言い出す人がきっと現われると思うんですが、でもサンデルの指導教官でコミュニタリアリズムを代表する哲学者の一人、チャールズ・テイラーはカナダ・ケベック州の―すなわち、カナダの他の地域とは大きく異なる文化的バックグラウンドを持つ地域の―出身です。「共通善」を掲げるサンデルのコミュニタリアニズムも、現代アメリカが道徳的中立性を過剰に追求してきてしまったという彼の見立て(その見立ての妥当性についてはここでは問いません)がその背景にあるわけです。しかし現憲法下で大部分の期間与党であった政党が道徳的に中立な政治を目指したとはおよそ言い難い日本において、「サバイバル・ガイドとしての哲学」がマジョリティ向けの商品として流通するというのは、コミュニタリアニズムがもともと想定していた政治的前提からはちとかけ離れた事態なのではないか、と。