「日本一長く服役した男」
なぜか NHK のサイトにきちんとした番組の情報が残っていないので、番組表のスクリーンショットを貼ります。
「仮釈放になってすぐに出てくることができる」という誤解が広まっている「無期懲役」についての問題提起……のはずなのですが。取材を受けた元刑務官の男性は「(無期懲役は)本当に終わりのない/いついつまで頑張ったらっていう 有期刑の者とは明らかに違うので/とてもじゃないが希望を持たすとか 指導の仕方っていうのはできなかった」(テロップの書き起こし、以下同じ)と無期懲役の重さを語りながら、「もう自業自得 当然の結果だと 見る人もおるでしょうし/特に被害者の方であれば それも仕方ないことだと思います」と語る。取材中に死亡した元受刑者の火葬に立ち会った男性は「男性〔=元受刑者〕の生きた意味 どういうものだと?」と問われ、「人の命を奪って 人の未来も奪ったんだから 仕方ないんじゃないですか/人の未来奪っといて 自分だけのうのうと生きようなんて/そんな世の中は通らないと思いますよ」と語る。
極めつけは、元受刑者を受け入れた福祉事務所の代表。受け入れた当初の取材では「ここで与えられた使命というのは 社会復帰させることですから/罪を問い詰めることじゃないです/過去を責めても仕方ないでしょ 今からを見ていかんと」と語っていたにもかかわらず、元受刑者の生活態度にいらだちを覚えると「一生ね 自分の中で罪は償うていかな/刑務所で償うのか ここで償うのか 場所が変わっただけ/今から生きるためには Aさんが亡くなられた 自分があやめた人に/手を合わせて「すまんやったごめんやった」 ちゅうて生きていかなんと」と説教をしてしまう。
しかし人の未来奪っといて 自分だけのうのうと生きようなんて/そんな世の中は通らないと思いますよ」というのは本当だろうか? 2千万人の「未来」を奪った侵略戦争や植民地支配についてこの社会はそんな姿勢を見せているだろうか? むしろ「いつまで過去を蒸し返すのか!」と声高に言い立てているのではないのだろうか?
元刑務官と火葬に立ち会った男性の二人の語りは、番組中で語られたことだけを見ると61年もの服役を「仕方ない」としているようでいて、語り口や身振りなどは口にできない思いをなお抱えこんでいるようにも思えた。本当は「無期懲役」についてもっと批判的なコメントも口にしたいのに、「世間」がそれを許すまいと思っているようにも見えたのだ(あくまで見えた、だけだが)。それがまた、61年も服役した男の犯罪と国家犯罪に対するこの社会の態度の違いを痛感させた。
いつもコメントを下さる Teru さんからメールでお知らせをいただいたのだが、この番組についての Zoom ウェビナーが来月末に開催されるとのこと。
私も早速申し込んだ。上記のような私の感触が正しかったのかどうか、確かめてみたい。