「否認」の深刻さ

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木曜日

 不正選挙陰謀論は自己論駁的だ。民主党員は悪魔のように狡猾で、バイデンに有利なように選挙を操作するため複数の州と何百何千もの郡で歩調を合わせた。しかしとても愚かで無能なので上院で多数派になるよう操作するのを忘れ、下院で議席を失いさえした。証明終わり。

実際にこれを陰謀論者につきつければ、彼らは「陰謀が露見しないよう、勝ちすぎるのを避けたのだ」と返すことができるので、「論駁」は達成されないだろう(もちろん、これでハッと目が覚めるひとがいてもおかしくない)。たとえば反ユダヤ主義ユダヤ人を一方では「狡猾に世界を裏から支配するやつら」として、他方では「劣等民族」として描くことを、マイケル・シャーマ−ならよく知っているはずである。

アメリカ大統領選挙についての報道では「分断」がお約束のキーワードになっていた。しかし少なくとも同程度に深刻なのは、アメリカに広がる(ついでに日本にも波及してきている)「否認」だろう。

thehill.com

 COVID-19のために死の床についていてなおCOVID-19を否認する人々。この否認は明らかに「分断」の背景にあり、「分断」を加速している要因だ。

安倍・菅政権のCOVID-19対策はまったくロクでもなかったが、トランプやボルソナーロなどと違ってCOVID-19の脅威を否認する右派言論人の主張をおおっぴらに裏書きしたりしなかった点だけはマシだった。彼らの政策はCOVID-19の過小評価に引きづられてはいても、たとえば小川榮太郎の主張を支持したりはしなかった。少なくともアメリカと比べればCOVID-19否認派が周辺的な存在にとどまっている一因はそのおかげだろう。