FNSドキュメンタリー大賞「死刑囚と姉」

素人目にもいまだ長期間の拘禁の影響が残る袴田さんだが、番組内でもナレーションで指摘されていたように、はやり釈放直後とは表情からして違う。いまさらながら、再審開始決定と同時に釈放命令が下ったことの重要さを感じた。
なおこの番組では虚偽自白の心理について浜田寿美男氏や高木光太郎氏のコメントではなく、日本評論社から刊行されている『なぜ無実の人が自白するのか―DNA鑑定は告発する』(S・ドリズィン、R・レオ)が援用されていた。訳者は現在、アダルト・ビデオへの出演強要問題を告発してちょっとした時の人となっている伊藤和子弁護士。
ただ、袴田事件における「虚偽自白の心理」としては特に問題のない説明だったが、任意の取り調べの段階や逮捕からまもなく起きる虚偽自白のケースについては誤解を与えてしまわないかな、と少し心配になった。虚偽自白を引き起こす要因はただ一つではないので、あるケースで重要だったファクターが別のケースではほとんど効いていないこともある、ということをここで微力ながら補足しておきたい。