橋下徹 vs. 『新潮45』訴訟高裁判決について

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 橋下徹・前大阪市長は「演技性人格障害」などと書いた月刊誌「新潮45」の記事で名誉を傷つけられたとして、橋下氏が発行元の新潮社(東京)と筆者の精神科医・野田正彰氏に1100万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が21日、大阪高裁であった。中村哲(さとし)裁判長は、記事は意見や論評の範囲内と判断。110万円の賠償を命じた一審判決を取り消し、橋下氏の訴えを退けて逆転敗訴とした。

 同誌は、橋下氏が大阪府知事時代の2011年11月号で「大阪府知事は『病気』である」とする野田氏の記事を掲載し、高校時代の橋下氏について「うそを平気で言う」などの逸話を紹介。「演技性人格障害と言ってもいい」と書いた。高裁判決は、記事は当時の橋下氏を知る教員への取材や資料に基づいて書かれ、新潮社側には内容を真実と信じる相当の理由があり、公益目的もあったとした。

同誌11年11月号が出た当時にこのブログでもとりあげた記事をめぐる訴訟の高裁判決です。この種の訴訟では高裁判決が最高裁でひっくり返ったケースが VAWW-NETNHK、光市事件弁護団 vs. 橋下徹チャンネル桜 vs. NHK などいくつかありますが、いずれも被告に有利な逆転判決となっていますので、このケースが最高裁でひっくり返る可能性はあまりないのかもしれません。
気になるのは真実相当性を認めた根拠が「当時の橋下氏を知る教員への取材や資料に基づいて書かれ」とされている点です。法廷での論戦をフォローしていたわけではありませんので新潮社および野田氏がどれほどの取材を行っていたのか詳細はわかりませんが、おそらく教員への取材が中心だったのでしょう。そうした取材に基づいて「うそを平気で言う」と記述しただけならいいのですが、この場合は精神科医である著者が「演技性人格障害」といった医学的な概念を用いているところに留意する必要があります。精神科医がこのような概念を用いる際に要求される真実相当性の水準はそれなりに高いものであるべきだ、と私は考えるからです。
すでに述べた通り具体的な事情に通じていませんので、判決が不当であるとまでは考えませんが、「言論の自由が守られた!」と手放しで喜べる判決でもないように思います。