恣意的捜査疑惑に全く無批判な報道

 警視庁保安課は20日までに、売春防止法違反(周旋)の疑いで、全国21都道府県にデリバリーヘルス店を展開する「サンキューグループ」の創始者で会社役員の吉田浩二容疑者(61)=東京都新宿区原町3の21の1=ら計21人を逮捕した。

 警視庁によると、吉田容疑者らは、年間約4億円を売り上げていたという。数年前から「派遣されて来る女性が、インターネットに掲載されている写真とまったく似ていない」などの苦情が相次いでいた。

 逮捕容疑は、2014年5〜10月、女性従業員をホテルやレンタルルームに派遣し、客に売春をあっせんした疑い。

記事から伺うことができるのは、「派遣されて来る女性が、インターネットに掲載されている写真とまったく似ていない」という苦情への対応として警察が検挙に踏み切ったらしい、ということです。実際に派遣する女性と「まったく似ていない」写真で客寄せすることがそもそも刑事犯罪に当たるのか、当たるとしてどのような罪になるのか知りませんが、少なくとも「売春防止法違反」でないことは確かです。厳密に言えば、売春防止法第6条に抵触する行為をしていたであろうことは当然想定できることですが、それと「派遣されて来る女性が、インターネットに掲載されている写真とまったく似ていない」という苦情とはまったく関係がありません。普段はデリヘルの営業を目こぼししておいて、売春防止法第三条に抵触する行為(「その相手方となつてはならない」)をした者の「苦情」に対応するために手のひらを返したわけです。非常に問題のある法運用*1だと思いますが、記事には批判的視点などまったく見られませんね。

*1:将来的にはともかく現状ではセックス・ワーカーの人身保護を第一の目的とした法運用、ないし法改正が必要だと思いますが、それはさておき。