舞鶴女子高生殺害事件における面割り過程について


表題の事件の最高裁判決を読んだのですが、目撃者の証言については次のように認定していました。

(……)
すなわち,(1)Dが目撃したのは,暗い未明の時間帯に車を運転しながら交差点を通過するほんの数秒間だけであった上,Dは,男性よりもその手前(D側)に立っていた被害者に強い注意を向けて見ていたことが認められるのであって,視認条件に制約があった。(2)Dは,平成21年2月11日に写真面割りを行い54枚の写真の中から被告人の写真を選び出したとはいえ,その前の同年1月11日の警察官取調べの際に,警察官が所持していたファイルの中に被疑者の顔写真(被告人のもの)があるのを見付け,わざわざ頼んでその写真を1枚だけ見せてもらっており,これによって記憶が具体的に変容した可能性がある。(3)本件の9日後の平成20年5月16日に自ら駐在所へ出向き最初に説明した際には,要旨「目撃した男性は,年齢19,20歳くらい,細い顔,細身で背は低くない。身長170ないし175cmくらい,頭髪はロン毛ではなく短かった(特徴のある髪型ではなかった。)。色不明,着衣等不明,気持ち悪い目つきだった。顔まではよく覚えていないが,目つきが特に印象に残っており,横幅が狭く上下に幅がある目だった」などと年齢,目つき等について供述をしていたのに,捜査が進み取調べを重ねるにつれて,その供述から,合理的な理由なく,徐々に被告人の特徴(本件当時59歳,細く横長の目,野球帽を着用等)と矛盾する部分が消失し,最終的に被告人の特徴と一致するように変遷していき,第1審証言に至っている。(4)平成21年2月15頃,同じ団地に住む民生委員に対し,「若い男やと言うてしもうた」,「もっと年が上らしい」などと目撃した男性が若かったと供述したことを後悔するような発言をするとともに,被告人の写真を見せてほしいとまで頼んでおり,事後的に警察の得ている情報等に影響され,目撃した男性の特徴を被疑者とされている被告人の特徴と整合させたいとの思惑を有していた可能性がある。(5)他方,以上のようにDの第1審証言の信用性を減殺する方向に働く事情が存するのに,これを考慮してもなお信用性を積極的に肯定し得るほどに同人の認識力や記憶力が高く確実なものであることを示すに足りる具体的事情は見当たらない。
これらの問題点は,Dの第1審証言の信用性を損なうものといわざるを得ない。
(http://kanz.jp/hanrei/data/html/201407/084531_hanrei.html)

原文の丸囲み数字を( )書きに変更。
これはもう「ダメ」のひとことですね。この目撃証言の信用性が否定されるのは当然でしょう。もちろん、目撃者に悪気があったわけではないですが。