警察のミスリードを許すな

警察としてはなんとか「サイバー犯罪の恐怖!」という方にメディアの関心を向けたいのでしょうが、長い間指摘され続けてきた「人質司法」の問題点をこれ以上放置すべきではありません。
特に留意すべきは、この種の虚偽自白が必ずしも捜査員の「面倒くさいのでさっさと捜査を終わらせたい」といった意識によって引き起こされるわけではなく、むしろ犯罪捜査にあたる人間のエートスによって起きている可能性がある、という点です。警察官や検察官が取調べそのものを「反省」の場と位置づけ、取調べた被疑者の「反省」する姿にやりがいを感じている……という点については以前にも指摘したことがあります。取調官は「素直に自白させて、寛大な処分ですむようにしてやることこそが、この被疑者の更生に役立つ」と心から信じているからこそ、自白を強いるのかもしれないわけです(もちろん、そうでないケースもあるでしょうが)。
とはいえ、例えば刑事訴訟法248条から「犯人の性格」や「犯罪後の情況」を削除して、自供したか否かが起訴・不起訴の判断を左右しないようにする……というのも、直ちには採用しがたい解決策です。そのような法改正をすれば起訴される被疑者は確実に増加するわけで、この点への対策がさらに必要になります。また、警察官や検察官の意識改革も一朝一夕でできることではありません。となればやはり、取調べの全面可視化や弁護士の立ち会いを認めさせることがまずは検討されるべきということになります。