「ファスト」ではなく「サステイナブル」な魚を!

水産庁のプレスリリース、「「魚の国のしあわせ」プロジェクト実証事業の募集の開始について」によれば、「周囲を海に囲まれ、多様な水産物に恵まれた日本に生活する幸せを、5つのコンセプト(味わう、感じる、暮らす・働く、出会う、楽しむ)に基づき、国民の皆様に実感していただく」のだというが、その一環として出てくるのが「手軽・気軽」がウリの「ファストフィッシュ商品」なのだと。スーパーに行けば切り身だの冷凍食品だのが売られているのになにが面倒なの? と思いたくなるが、「魚離れ」をとりあげた平成18年度の水産白書によるとなるほど「魚介料理は調理が面倒だから」「魚焼きグリルを洗うのが大変だから」という理由を肉派が挙げている。しかしその割合は順に 25%、20% で、「魚の骨を取り除くのが面倒だから」は 12.8% しかない(骨のない状態で売られている魚介類がたくさんあるからだろう)。これらよりもパーセンテージの高い理由がほかに存在している。すなわち「同居の家族が魚介類を好まないから」が 32%(「家族」の多くは子どもを意味する)、「肉より割高だから」が 31%。この二つと関連して「肉に比べて満腹感が得られない」や「ボリューム感がない」といった声もあることが指摘されている。子どものいる世帯にとって、出費を抑えつつ腹一杯食べさせようとすれば魚より肉という選択になるわけだ(参考)。
さらに、調理の手間がいらないはずの外食や中食でかえって肉料理派が増えるというデータ(「食事の主菜について肉料理の方が多い人」は56%であり、外食では62%、中食では65%」)もある。「手軽・気軽」で勝負するなら結局は肉、ということになりはしないか?
平成23年度版の水産白書によれば、日本周辺水域で資源量を評価している52魚種・84系群のうち約4割の33系群が低位水準だという。近年低位水準の割合が減り中位水準が増えていて、なおこういう状態。高位水準と評価されているのは 16.7%、すなわち6分の1でしかない。これでは「資源保護のためには、魚離れも悪くないのでは?」と思いたくなる。水産庁は「ファストフィッシュ」よりもまず「サステイナブルフィッシュ」についての情報発信をして、魚好きが安心して魚を食べられるようにしてほしい。