お見舞い申し上げます


被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
最終的にどれほどの規模の被害が確認されるのかまだ予想もつきませんが、津波による被害が非常に大きい点や原子力発電所への影響など、阪神・淡路大震災とは質的に異なる側面があり、短期的・長期的な救援活動に多くの困難があることと思いますが、一人でも多くの方が救援されること、また生存者の方々の生活支援が十分になされることを祈っております。


関西以外では報道されているかどうか承知していませんが、神戸市ほかでは県や市が都市再生機構や民間から借り上げて被災者に供給してきた復興住宅の返還期限が迫っていることが問題になっています。

 神戸市が阪神・淡路大震災の被災者向けに民間事業者などから借り上げた復興住宅(107団地3805戸)が2015〜23年度に順次返還期限7 件を迎える問題で、住宅を提供してきた民間の貸主からも困惑の声が上がっている。2007年の調査では貸主の約7割が借り上げ期間の延長を要望。景気低迷が続く中、返還後の入居者確保などに不安を募らせている。
 借り上げ住宅は、同市が民間や都市再生機構(UR)などから20年の期限で借り上げ、震災で家を失った被災者らに供給。市は返還に向け、今年11月から入居者への説明会や住み替えの意向調査を行っている。
(中略)
 借り上げ住宅の入居者の家賃は一般の市営住宅と同水準で、本来の家賃との差額は市が負担。だが、返還後はすべて入居者負担となるため、退去を余儀なくされるケースが続出するとみられる。
 返還後の入居者確保は貸主にとっても課題で、今年7月、市が民間貸主向けに行った説明会でも契約延長を求める意見が出たという。市は「アンケートは判断材料の一つではあるが、返還方針は財政状況など総合的に判断した結果」とする。
(後略)

 阪神大震災の被災者向け復興住宅として独立行政法人都市再生機構から借り上げた県営住宅が平成28年度以降に入居期間満了を迎える問題で、井戸敏三知事は7日の定例会見で「棟単位で借り上げた住宅の一部の買い取りを検討する」と述べ、2年後をめどに結論を出す意向を示した。
(後略)

地震から16年経っても失われた住宅の問題が完全には解決していないことがわかります。震災で転居を余儀なくされた被災者が「孤独死」を迎える事例も続いています。

 阪神大震災の被災者らが暮らす兵庫県内の公営住宅(復興住宅)で、一人暮らしの入居者が誰にもみとられずに死亡した「孤独死1 件」が2009年の1年間で62人に上ったことが15日、分かった。


 05年以降は年々減少していたが、一転して08年の46人から16人増えた。仮設住宅が解消した00年以降の孤独死1 件は計630人になった。

いずれも、大規模な災害からの復興は非常に長期にわたるプロセスであること(特に自力での住宅再建が困難な高齢者や貧困層にとって)を示しています。今回の大震災からの復興事業にあたって、阪神・淡路大震災の経験から酌むべき教訓の一つがこれであろう、と思われます。


もう一つ、私自身の体験から考えるのは、「大災害に妙な意味を持たせるのは止めてほしい」ということでしょうか。もちろん、東日本大震災の被害や救援、復興活動について、またこの災害から酌むべき教訓などについて議論してゆくことは必要です。そうではなく、大震災をなにごとかのアレゴリーとして用いることについて、です。ご承知の通り、阪神・淡路大震災は地下鉄サリンテロ事件と同じ年に起こったこともあり、時代を象徴する出来事としていろいろな意味を負わされてきました。しかし被災者にとって災害はまずもってそれがもたらす被害をこそ意味するのです(少なくとも私にとってはそうでした)。

*1:ミスリーディングな見出しですが、「増加に転じ」ているのは復興住宅ではなく、復興住宅での孤独死です。