宿命的な類似性

 第一に、これまでも何度か申し上げたことだが、論破されたばかりの議論をバカの一つ覚えで繰り返すことはやめていただきたい。論点が噛み合わない議論はおよそ無意味なのだから、相手が書いたものをちゃんと読んで、自分の論点のどこがどう批判されたのかを踏まえた上で議論を展開していただきたい。
 第二に、事実に基づいた議論をしていただきたい。渡部氏はいつもデタラメにもとづいた議論をするので無意味な議論に終わってしまうのである。
 第三に正しい知識に基づいた議論をしていただきたい。渡部氏の法律に関する知識はその根本的な基礎において欠けておられるようなので、基礎だけでも一応の勉強をなさってから、論じていただきたい。
 第四に正しい推論規則に従って議論を展開していただきたい。詭弁にはもうあきあきした。
立花隆、『ロッキード裁判批判を斬る 3』、朝日文庫、18ページ)

南京事件否定論者(をはじめとする歴史修正主義者)と議論した経験がある方なら、この4項目は何度も何度も叫びたくなったことがあるだろう。だがこれは実際には、『朝日ジャーナル』での立花隆の連載に対して「反論させろ」と渡部昇一が言い出し『朝ジャー』側がそれを受け入れた際に、立花隆が並べた要望である(第5の項目は省略)。ロッキード裁判批判論においても、南京事件否定論においても、渡部昇一エピゴーネン渡部昇一の誤りを見事に踏襲している。まあ同じ人間が絡んでるんだから、そうなるべくしてなっているわけだ。

 反対尋問なしの嘱託尋問調書を証拠に採用したのはけしからん。憲法違反だ。暗黒裁判だ。
 渡部氏の主張をせんじつめると、結局、これだけなのである。これを手を替え品を替えちがう表現で(ちがう表現のネタがとっくにつきており本質的には同じ表現で)繰り返すだけなのである。
 その主張はよくわかった。実りある論争に必要なのは、そこから一歩先に踏み込んだ各論なのである。
 裁判の普通のプロセスにおいて反対尋問があるのは当然のことだが、だからといって反対尋問なしの証言調書を証拠として採用することが一般的に禁じられているわけではない。それは一定の条件のもとに法的に許容されているのである。
 従って、「反対尋問なし」を前提として、「憲法違反」の結論を一般的に導くことはできない。
(同書、89ページ)

この批判は、小室直樹の裁判批判論(こちらを参照)についても100%妥当する。それだけでなく、「相手が書いたものをちゃんと読んで、自分の論点のどこがどう批判されたのかを」決して踏まえようとしない小室信者についても妥当する。これまで何人もの人間がロッキード裁判関連のエントリにケチをつけに来たけれども、事件および裁判についての具体的な知識に基づいた議論を展開できた人間は一人か、せいぜい二人しかいなかった。自称法律家氏は「その他大勢」の最新の事例であるにすぎない。