どの口がそれを……


月が変わってしまいましたが、8月26日朝日新聞(大阪本社)オピニオン欄掲載の「論壇辞表」じゃなかった「論壇時評」。今回は「建設的な哲学 ネット共同体に未来見る」と題してあずまんが登場。

 最後に注目の文章を二つあげておきたい。ともに短いコラム。
 一つは有田正規(9*1)。生命科学の領域でこの10年で論文数が急増しており、いまや質の確保が困難で、研究者間の共有知識すら失われているという衝撃的な報告。電子出版の増加に加え、査読の必要がない「オープンアクセス」誌の出現が大きいらしい。とにかくなんでも出版し、あとは読者の判断に委ねる、との「倫理」はいかにもネット的だが、その影響が科学の世界にまで及んでいることに戦慄を覚えた。

原文のルビを省略。そんなことにあずまんが「戦慄を覚えた」などと書くことができた、という事実に戦慄を覚えた。
「もう一つ」としてこの後には宮前ゆかり氏の「国境を越える『言論の自由』」(『世界』9月号)が言及されている。ウィキリークスを紹介したものとのことだが、「創設者の政治的で戦略的な運営方針を知ると、日本のネットで言われる「言論の自由」がいかにお気楽なものか、いささか反省し襟を正さざるをえない」とも。しかし「襟を正」すつもりがあるならまずは「日本のネットで言われる」などと主語を曖昧にせず、自分の発言を見直すべきだろう。

*1:原文では白抜き数字。『科学』8月号掲載の「論文数はどれほど重要か」を指す。